出典:食品・薬品安全性研究ニュース第13号
http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzen_news/13.html#6
「(多種)化学物質過敏症は環境不耐症と言う方が良い」
Report of multiple chemical sensitivities (MCS) workshop, Berlin, Germany,
21-23 February 1996. PCS/96.29 IPCS, Geneva, Switzerland
Lessof M
Human and Experimental Toxicology 16 : 233-234 (1997)
(多種)化学物質過敏症 (Multiple Chemical Sensitivity; MCS) の概念は論争の的であり,それは1940年に Randolph がこれを言いだしたときから続いている.
化学物質が健康問題を起こし得ることを否定する者はまずあるまいが,MCS の考え方は明確でなく,懐疑派からすると実質がないものである.
論議はいまだに,MCS が単一のものか,いくつかの身体的または心理的病態の不適当な診断であるか,という辺りにある.
Randolph の主張は,化学物質に不適応の状態の人は過敏症となり,きわめて低い濃度の物質に対して不快反応が起こるというものである.
症状は多様で多器官を含み,各種の化学構造の異なる物質によって誘発される,という.
批判的な立場からは,MCS には何も診断基準がなく,診断はもっぱら自覚症状に基づいており,そのように決定された(心身症に属するものが多い)診断は受入れ難いとされる.
大衆の中にこの考えを信じるものが増えてきた.多数の臨床生態学者 (clinical ecologists)と非専門家たちは Randolph の考えを熱心に信じており,彼らの考えに賛成しない者を計画的に大挙して襲撃するまでに至っている.
ある場合には,論争は政治的なものとなり,スウェーデンでは攻撃的なロビー活動が進められていると報じられている.