低線量放射線の次世代への影響5 | 化学物質過敏症 runのブログ

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放射線によって確かに個体毎に異なる確率的な遺伝子発現がみられたマウス5 匹を1 群として3Gyと0.6Gyのガンマ線を照射し、1か月後に骨髄細胞を取り出し、マイクロアレイによって網羅的遺伝子発現解析を行った。

細胞から抽出したRNAを用い、マイクロアレイ毎にあらかじめ設定された数百の遺伝子のうち、どの遺伝子がどれくらい発現しているかを1匹毎に調べ、非照射対照データとの差を解析した。

化学物質と比較するために、発がん性のあるベンゼンを300ppm相当経口投与したマウスについても同様に解析した。
 興味深い斬新なデータが多数示されたが、詳細を理解するには遺伝子解析の専門的知識を必要とするので、ここでは主な結果だけを簡単にまとめる。
1)放射線照射後、多数の遺伝子の発現が変化するが、5匹に共通に見られる普遍的遺伝子発現の他に、純系で通常の実験では同じ影響がみられるマウスを使っているのにもかかわらず、確かに5匹の個体毎に違いのある確率的遺伝子発現が見られた。
2)この普遍的発現をする遺伝子と確率的発現をする遺伝子は、ほとんど別の遺伝子で重複しない。
3)確率的遺伝子発現には、線量(3Gyと0.6Gy)によっても異なったパターンを持ち、共通のものの他に、それぞれの線量だけに変化を示す遺伝子発現がある。3Gyでは比較的発がん関係の遺伝子が少なくなく、0.6Gyでは免疫反応に関係する遺伝子も多い。
4)放射線による遺伝子発現の変化と、ベンゼンによる変化を比較すると、共通の遺伝子の変化は少なく、同じような働きをする遺伝子の中でも、それぞれ違ったグループを使っている。
5)このように放射線や化学物質のばく露後、それぞれ特徴的な遺伝子発現の変化があることが明らかになり、それぞれの変化はその個体が受けた影響、将来の発がんなどの障害と関係しているはずであることが分かってきた。

すなわち個体毎に違う確率的影響まで含めて、どのような遺伝子発現の変化が起これば、どのような健康影響が起こるか予測可能になると期待される。


おわりに
 放射線事故と障害の危険性は、初代原子力委員に就任した湯川秀樹博士が警告し、その後の政策に抗議して辞任している。
 日本の科学の先々を考えると、私たちは、いま、その岐路に立っているのだと思う。
 明日のエネルギー問題に対して、専門家、非専門家の分け隔てなく、考えていることに、声を挙げて戴きたいと思う。