環境試料や化学物質からの受容体作用の検出2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・酵母アッセイと化学物質の作用

表1に示す各種の受容体を導入した酵母アッセイで,さまざまな化学物質に受容体への作用(結合活性)があることが分かってきました。

病気治療の目的で受容体作用を持つように作られた合成ホルモンなどの医薬品を除いて,ほとんどの化学物質の作用の強さは,高いものでも私達が本来体内に持っている受容体作用物質の数十分の1以下です(図2,レチノイン酸受容体の例)。

しかしながら,人工的に作られた化学物質は,天然の物質よりも生物体内での分解や代謝が遅いことが多く,持続的に作用したり,本来の作用物質の効果を妨害したりすることで影響を及ぼすと考えられています。

特に自然界では,野生生物は環境を汚染している化学物質を避ける術をもたず,近年では作用の強い医薬品などの化学物質が環境中に排出されていることもあり,汚染環境に生息する生物が影響を受けている可能性は否定できません。

表1 本研究所で使用している酵母アッセイの種類と作用のある化学物質の例(拡大表示)


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図2 レチノイン酸受容体に作用する化学物質の例(拡大表示)
本来の作用物質である全トランスレチノイン酸は濃度とともに相対活性が増強する。
図中の4-n-ヘプチルフェノールのような化学物質の作用は全トランスレチノイン酸の数十分の1以下であるが,同様の挙動を示した。

横軸は対数表示。nM : n (nano) =十億分の一を表す単位,M = mol/l。

環境試料への適用

環境汚染の研究において広く行われている計測機器による分析では,河川水や大気などの環境試料中に含まれる既知の化学物質の量は測定できても,その作用を検出することはできません。

酵母アッセイは,試料中の化学物質を各物質の存在量としてではなく,受容体への複合的な作用の強度として測定しているので,河川水などの環境試料や食品に応用すると,その試料の持つ受容体への作用という“定質的”な分析が可能となります。

例えば,都市部を流れる川の水にはたくさんの化学物質が混入していますが,現在の技術では汚染化学物質のすべてを測定することはできませんし,すべての化学物質について生物への作用の情報があるわけではないので,そのような環境に生息する生物への影響は分かりません。

一方,酵母アッセイによる分析は,個々の受容体への作用を検出できるので,生物が受容体作用から受ける生理機能への影響を推定することができます。

現在では,数多くの知見の蓄積から,受容体への作用を検討することによって,河川水などの環境試料の汚染源あるいは汚染化学物質の大まかな推定も可能となってきました。

おわりに

化学物質を安全に使用するためには,その化学物質の持つ性質を見極め,使用の用途と量を十分に管理していくことが大切です。

そして,環境汚染の調査により,人間を含めた生物にどのような影響の可能性があるのかという情報を提供しなければなりません。

酵母アッセイは,環境汚染の分析に受容体作用という新しいカテゴリーをもたらしました。

受容体作用を迅速・簡便に推測できるこの試験法は,化学物質の有害性評価にも環境汚染の調査にも有用な手法であると期待されています。

(かまた りょう,環境リスク研究センター
環境曝露計測研究室)


runより:今回のカテゴリーは人体についてにしましたが事実上化学物質過敏症のカテゴリーと思っていいです。

タチオンを飲めない方が「ビール酵母から作られているので受け付けない」と言っていたからです。

酵母でも人為的に変質させると化学物質と同等になる可能性があると考えています。