・特定化学物質による中毒(平成18年)
発生月 業種 被災状況 要因分類 原因物質 発生状況 発生原因
1月 (1721)無機化学製品製造業 中毒1名 特定化学物質 塩素 次亜塩素酸カルシウムを製造する反応槽において、配管のつまりを除去する作業を、特定化学物質等作業主任者の指揮なく製造反応中に行おうと塩素の反応槽への吹込を中止し、空気置換のためバルブを開け、清掃口のゴム栓を外したところ、ハロゲンガス用防毒マスクを着用していなかったことから槽内に残留していた塩素ガスを吸い込み被災したもの。 作業主任者職務不適切(使用マスクの監視不足、単独作業等)
作業標準不適切(反応のどの段階で洗浄作業を行わせるかが不明瞭)
呼吸用保護具不適切(ハロゲンガス用防毒マスク使用せず)
1月 (3601)各種機械装置の組立てまたは据え付けの事業 中毒1名 特定化学物質 硫化水素 廃棄物からメタンガスを製造する工程で副生する硫化水素の定期測定を行っていたところ、積雪により施設内の窓、シャッターが開放できなかったことや、換気が不十分で精製前のバイオガスが高濃度で施設内に残留し、さらに、防毒マスクの装着が不十分であったため、マスクの隙間からバイオガスが流入し、硫化水素にばく露したもの。 単独作業
換気不十分
呼吸用保護具装着不十分(フィットテストなし)
2月 (4707)医薬品製造業 中毒2名 特定化学物質 ヨウ化メチル 治験薬材料の最終工程の炉過作業をした際、ヨウ化メチルが排液配管を接続するポリ塩化ビニル製のダクトホースを溶かして床面に流出したため、ハロゲンガス用の防毒マスクを着用して、ホースの交換作業及び床面の清掃作業を水洗及び拭取りで行ったところ、ヨウ化メチルを吸入して中毒になったもの。 ダクトホースの選定誤り(ポリ塩化ビニル製→オレフィン系)
呼吸用保護具不適切(ハロゲンガス用→有機ガス用)
非定常作業における作業標準なし
3月 (9417)旅館その他の宿泊所の事業 中毒1名 特定化学物質 塩素 飲料水浄化設備室に設置されている濾過用薬注ポンプの点検中、次亜塩素酸ナトリウム液を補充しようとしたところ、誤って近くに箱積みされていたポリ塩化アルミニウムを濾過用ポンプに入れたため、塩素ガスが発生して塩素ガス中毒になった。 ポリ塩化アルミニウムと次亜塩素酸ナトリウムとの混触
保護具不使用
3月 (4710)石油精製業 中毒1名 特定化学物質 硫化水素 融解状硫黄の回収装置の復旧作業中に脱硫装置の原料ガスの緊急遮断弁が閉止したため、ドレン弁から閉塞物を除去しようと慌てて、備付けの保護具を着用することなく、ドレン弁を閉止しようとしたが、ドレンノズル先端から噴出したガスを吸い込み硫化ガス中毒になった。 単独作業
作業主任者職務不適切(保護具使用の監視)
非定常作業における作業手順不適切
呼吸用保護具不着用
3月 (5203)非鉄金属圧延又は伸線業 薬傷3名 特定化学物質 硫酸 工場内の廃水処理場内において、硫酸供給用のポンプを新たに取り付けるために、配管用のホースを、水平方向から垂直方向に曲がった枝管に差し込み、上方へ押し込もうとしたところ、枝管の付け根部分が破損し、硫酸(濃度78%)が漏れて飛散し火傷を負った。 作業標準未作成
供給タンクの接合部の強度不足
保護具なし
3月 (5701)発電用、送電用、配電用又は産業用電気機械器具製造業 中毒1名 特定化学物質 二酸化窒素 銅廃液タンク内の銅析出物を廃硝酸水溶液を使用して除去する工程において、担当者が帰宅時に廃硝酸水溶液を循環させるポンプを停止したが、その後も銅と廃硝酸水溶液が反応して二酸化窒素が発生し地下タンクヤードに充満したもの。緊急対応の指揮をしていた被災者が、呼吸用保護具を使用せずに事業場の地下タンクヤード入り口で二酸化窒素ガスを吸入して中毒になった。 作業計画不適切
作業主任者選任せず
呼吸用保護具使用せず
非定常作業における作業標準なし
4月 (4107)パン又は菓子製造業 中毒2名 特定化学物質 塩素 食肉等のパック詰め原料等の殺菌・消毒作業において、使用する次亜塩素酸ナトリウム溶液に、次亜塩素酸ナトリウム溶液を補充しようとしたところ、容器の形状が似ている食酢を誤って入れてしまったことにより塩素ガスが発生し、中毒になった。 酢酸と次亜塩素酸ナトリウムとの混触
容器の区別不明瞭
換気不十分
4月 (3801)既設建設物内部の設備工事業及び附帯事業 中毒1名 特定化学物質 五酸化バナジウム 製油所発電設備の点検工事後、会社の駐車場にて、現場から持ち帰らないことと定められていた作業衣を着用して、バキュームカーの洗浄作業を行ったもの。この時、五酸化バナジウムを含有した燃焼灰を吸入し気管支炎等を発症した。 現場で使用した保護衣の再使用による二次発じん
安全衛生管理体制不備
関係事業者間の連絡調整不十分
安全衛生教育不十分
4月 (9416)前各項に該当しない事業(宗教、法務) 中毒1名 特定化学物質 塩素 デイサービス介護で浴室内にて入浴の準備作業を行っていたところ、前日に別の労働者が所定の消毒剤(トリクロロイソシアヌル酸含有)を、所定の量以上に入れていたため、トリクロロイソシアヌル酸の水溶液中での分解反応により塩素ガスが発生したもの。 作業標準なし
換気不十分
安全衛生教育不十分
4月 (5705)電子管又は半導体素子製造業 中毒1名 特定化学物質 アンモニア 被災者が金メッキラインにおけるニッケル槽の廃液処理の作業を行っていた際、アンモニアを供給するスイッチをオフにするのを忘れたため、自動でアンモニアが供給されてアンモニアにばく露されたもの。呼吸用保護具が酸性ガス用防毒マスクであったためにアンモニアには有効ではなく、中毒になった。 作業主任者選任せず
廃液処理時に自動的にアンモニアの供給を止める措置が講じられていなかったこと
呼吸用保護具不適切(酸性ガス用を使用)
6月 (4109)製氷業 大量漏洩 特定化学物質 アンモニア 工場内機械室において、冷凍庫の自動液戻装置に付属するフロートスイッチと配管の接合部が、経年劣化等によりボルトが腐食し、腐食により生じた隙間からアンモニア液が流出したもの。 設備の点検整備不徹底
6月 (9101)清掃業 中毒1名 特定化学物質 塩素 廃液の焼却処理において、当該廃液等を繰り返し屋外から運び入れ、ドラム缶内に注入する作業があり、着脱が煩瑣であるため、送気マスクを着用せずに行っていたもの。ドラム缶に次亜塩素酸ナトリウムを注入している作業中に中毒になった。 ドラム缶内の残存物調査が不十分であるにもかかわらず、一度に大量の次亜塩素酸ナトリウムを投入したこと
安全衛生教育不十分
6月 (3802)既設建築物の内部において主として行われる電気の設備工事業 (4208)その他の繊維工業又は繊維製品製造業 薬傷3名 特定化学物質 硫酸 工場の廃液処理施設の硫酸ポンプ点検中、工事請負業者の労働者は硫酸ポンプを取り付けた後、硫酸がスムーズに流れなかった。このため、硫酸ポンプの不具合であると確認した労働者はストレーナーと勘違いして逆止弁のキャップを開けたところ、系内のエアーチャンバー内に蓄えられていた硫酸が、逆止弁から噴出し、薬傷を負ったもの。 単独作業
非定常作業における作業規定なし(注文者からの具体的な安全対策不明瞭)
特定化学設備のバルブ等の誤操作
保護具の不着用
6月 (9416)前各項に該当しない事業 中毒1名 特定化学物質 硫化水素 フロン破壊装置での運転業務中、中和剤であるカーバイドスラリー中に溶存硫黄が含まれていることを確認していなかったため、中和槽にフロン破壊過程で発生した弗化水素、塩酸を投入したときに溶存硫黄と反応して硫化水素が発生していることを認識できず、中毒となったもの。 作業主任者選任せず
事前の計画段階で硫黄が反応系に存在していることを確認していなかったこと
換気不十分
呼吸用保護具不着用
6月 (4703)無機・有機化学工業製品製造業 大量漏洩 特定化学物質 塩化水素、二酸化硫黄 染料原料の製造工場において、塩化チオニルをタンクローリーから所定量受け入れるため、受け入れタンク内の残液を他のタンクへ搬送していたところ、誤って予定量より過剰に搬送したために搬送先のタンクの容量を超えてしまい、溢れた塩化チオニルが配管伝いに外部へ漏洩したもの。 外部へ漏洩した塩化チオニルは、排水溝の水や洗浄に使用した水と反応して塩化水素と二酸化硫黄となり、これを吸引した客らが中毒になった。 作業計画不適切
液量監視者不在
液搬送自動停止装置なし
漏洩時の処理(水と接触)不適切
6月 (9416)前各項に該当しない事業、(5704)通信機械器具又は同関連機械器具製造業 中毒等5名 特定化学物質 塩化水素 パッケージエアコン配管の洗浄作業を行っていたところ、配管が目詰まりして塩酸溶液が中に入らなくなったので、作業標準とは異なる目詰まり解消方法としてポンプに空気を注入した。その結果、ポンプに接続してあるホースが外れ、ホース内部に滞留していた塩酸溶液が噴出したもの。 作業手順不徹底関係事業者間の連絡調整不十分退避措置不十分安全衛生教育不十分