リスク評価実施物質:エピクロロヒドリン3 | 化学物質過敏症 runのブログ

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11.有害性情報


急性毒性


経口

ラットLD50値 が90 mg/kg(環境省リスク評価第1巻 (2002))および260 mg/kg(EHC 33 (1984))より、該当する区分のうち危険性の高い方の区分3とした。

経皮

ラットLD50値は591.5mg/kg(PATTY (5th, 2001))より区分3であり、他方、ウサギLD50値は1300mg/kg(環境省リスク評価第1巻 (2002))、754mg/kg(EHC 33 (1984))、1041mg/kg(PATTY (5th, 2001))の3件のうち2件が該当する区分4となる。

両動物種で区分が異なるため、危険性の高い方のラットの区分を採用して区分3とした。

吸入

吸入(ガス):

GHSの定義による液体である。

吸入(蒸気):

ラットLC50値は634.2 ppm(EHC 33 (1984))、251.1 ppm(環境省リスク評価第1巻 (2002))、500ppm(PATTY (5th, 2001))の3件があり、2件が区分2、1件が区分3に該当することから、区分2とした。

なお、試験濃度が飽和蒸気濃度(21578.9ppmV)の90%より低いことから、ガスの分類区分(ppmV)を適用した。

吸入(ミスト):

データなし

皮膚腐食性・刺激性

ウサギに原液を2-24時間適用した皮膚刺激性試験において、強度の刺激性と壊死が認められ (CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74 (2004))、ヒトでは職業ばく露における事故例として、皮膚の潰瘍、びらん、火傷などが報告されている (CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74 (2004)、ACGIH (7th, 2001))こと 、かつ、EU分類ではC;R34に分類されていることから、区分1とした。

眼に対する重篤な損傷・刺激性

ウサギの眼刺激性試験において、綿実油中80%液を適用した場合角膜障害を伴う強度の刺激性 (角膜障害)、10%液では軽度の刺激性の結果 (CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74 (2008))であることから区分2A相当であるが、腐食性のデータはないが、皮膚が区分1であることから区分1とした。

呼吸器感作性又は皮膚感作性

呼吸器感作性:ヒトで事故による大量ばく露の事例報告の中で、慢性の喘息性気管支炎が認められたとの記載(環境省リスク評価第1巻 (2002))があるが、この情報のみでは十分な証拠とは言い難く、データ不足により「分類できない」とした。

皮膚感作性:ヒトで職業ばく露により、皮膚炎を発症した6人の作業者がアレルギー性接触皮膚炎と診断された報告(CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008))、エポキシ樹脂工場で皮膚炎を発症した作業者19人に実施されたパッチテストで、8人が本物質に陽性反応を示した報告(CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008))、エポキシ樹脂工場で1-5年働いた労働者5人が、接触アレルギー検査のためのパッチテストで本物質に陽性反応を示した報告(ACGIH (7th, 2001))など、その他にも本物質が皮膚感作性を有することを示す複数の報告(EHC 33 (1984))があることから、区分1とした。

なお、モルモットを用いた皮膚感作性試験(Maximization 法)でも陽性結果の報告 (CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74 (2008)) がある。

生殖細胞変異原性

マウス骨髄細胞を用いた染色体異常試験(体細胞in vivo変異原性試験)で陽性〔CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008)、PATTY (5th, 2001)〕の結果に基づき区分2とした。

マウスの吸入ばく露による精原細胞を用いた染色体異常試験(生殖細胞in vivo変異原性試験)において陽性〔CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008)の結果があるが信頼性に疑義がある。

なお、マウスの優性致死試験(生殖細胞in vivo経世代変異原性試験)において陰性〔CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008)〕である。

in vitro変異原性試験として、エームステスト及び染色体異常試験で陽性の結果が報告されている(CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008)、NTP DB (2009))。

発がん性

IARC (1999) で2A、また、NTP (2005) でRに分類されていることから、区分1Bとした。

なお、ラットを用いた2年間経口投与試験の高用量群(10 mg/kg/day)では、前胃の過形成、乳頭腫、癌の発生率の有意な増加(IRIS (2008))を示し、ラットの30日間吸入ばく露試験では、その後の生涯観察において、対照群に認められなかった扁平上皮癌を含む鼻腔腫瘍の発生が認められている(IRIS (2008))。

生殖毒性

ラット雄に経口または吸入投与後未投与の雌と交配した結果、雄性不妊が明らかになり、投与用量が高くなると不妊は永久的となった(CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008)、ACGIH (2001))。

併せて、精子の運動能の減少、交配が成立した雌では受精卵および着床数の減少が見られた(CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008))。

逆に、投与雌を未投与の雄と交配した場合には、雌動物に生殖に関する影響は現れなかった(CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008))。親動物の一般毒性に関しては記述がなく不明である。

以上のラット雄の不妊および交配後の雌における着床数の減少に基づき、区分2とした。

なお、ラット、マウスおよびウサギの器官形成期のばく露では、いずれも仔の発生に及ぼす影響は見られず、ヒトの疫学調査ではグリセリン製造に従事し本物質のばく露を受けた男性従業員の授精能について、ばく露による悪影響は認められていない(IARC 71 (1999))。

特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露)

マウスおよびラットの吸入ばく露試験において、マウスの場合697 ppm(蒸気)を6時間(4時間補正値:3.957 mg/L)で気道および嗅上皮の壊死、潰瘍形成など(CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008))、およびラットでは283~445 ppm(蒸気)を6時間(4時間補正値:1.608-1.684 mg/L)で肺の浮腫や出血(IRIS (2008))の所見に基づき、区分1(呼吸器系)とした。経口投与では、ラットの場合7~350 mg/kgで多尿、腎重量増加、尿成分の変化、125 mg/kgでは約80%の動物に腎不全が起きた(CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008))こと、また、ラットおよびマウスで325~500 mg/kgで空胞形成を伴った腎臓障害(CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008))が記載され、吸入および経口の両経路とも有害影響の発生がガイダンス値範囲区分1に相当する用量でも認められたことから、区分1(腎臓)とした。

上記のラットおよびマウスの325~500 mg/kgを経口投与した試験ではさらに肝臓の脂肪変性が見られ(CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008))、かつ、事故により大量全身ばく露を受けたヒトの報告例の所見として、黄疸を伴った肝肥大が記載され、ばく露2年後も機能障害を伴う肝臓の脂肪変性が持続している(EHC 33 (1984))ことに基づき、区分1(肝臓)とした。

特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露)

ラットにおいて、13週間吸入ばく露により50 ppm(蒸気;0.189 mg/L)で腎尿細管の拡張(CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008))、10週間吸入ばく露により50 ppm(0.189 mg/L)で限局性尿細管変性(CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008))、生涯吸入ばく露により30 ppm(0.114 mg/L)で尿細管の変性や拡張(IRIS (2008))がいずれもガイダンス値範囲区分1に相当する濃度で認められていることから、区分1(腎臓)とした。

また、ラットおよびマウスに13週間吸入ばく露により、25 ppm(0.095 mg/L)以上で鼻甲介気道上皮に炎症、限局性びらん、過形成、扁平上皮化生(CERI・NITE有害性評価書 ver.1.1 No.74(2008))、ラットに30日間吸入ばく露により、100 ppm(0.378 mg/L <〈90日補正:0.126 mg/L〉)で肺の浮腫、出血および肺炎(ACGIH (7th, 2001))、ウサギに10週間吸入ばく露により、25 ppm(0.095 mg/L)以上で鼻炎、副鼻腔炎、肺炎が、ガイダンス値範囲区分1に相当する濃度で認められることから、区分1(呼吸器系)とした。

なお、心臓と中枢神経系への影響の記載(CERIハザードデータ集 96-48 (1998))もあるが、その情報の由来は1966年の文献(Fomin, A.P.: Gig. Sanit. 31(9); 7-11)に記載された一つの試験に基づく。

しかし、その後行われた複数の反復ばく露試験を含めその他の試験においては心臓と中枢神経系に対する毒性が記載あるいは言及されていないので、標的臓器として心臓と中枢神経系を採用しなかった。

吸引性呼吸器有害性

データなし

12.環境影響情報


水生環境急性有害性

魚類(ファットヘッドミノー)での96時間LC50 = 10600μg/L(環境省リスク評価第1巻, 2002, 他)であることから、区分3とした。

水生環境慢性有害性

急速分解性があり(BODによる分解度:67.9%(既存化学物質安全性点検データ))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=0.45(PHYSPROP Database、2005))ことから、区分外とした。


13.廃棄上の注意


残余廃棄物

廃棄の前に、可能な限り無害化、安定化及び中和等の処理を行って危険有害性のレベルを低い状態にする。

廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。

汚染容器及び包装

容器は清浄にしてリサイクルするか、関連法規並びに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。

空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。


14.輸送上の注意


国際規制


海上規制情報

IMOの規定に従う。

 UN No.

2023

 Proper Shipping Name.

EPICHLOROHYDRIN

 Class

6.1

 Sub Risk

3

 Packing Group

 Marine Pollutant

P

航空規制情報

ICAO・IATAの規定に従う。

 UN No.

2023

 Proper Shipping Name.

Epichlorohydrin

 Class

6.1

 Sub Risk

3

 Packing Group

国内規制


陸上規制情報

消防法、毒物及び劇物取締法の規定に従う。

海上規制情報

船舶安全法の規定に従う。

 国連番号

2023

 品名

エピクロロヒドリン

 クラス

6.1

 副次危険

3

 容器等級

 海洋汚染物質

P

航空規制情報

航空法の規定に従う。

 国連番号

2023

 品名

エピクロロヒドリン

 クラス

6.1

 副次危険

3

 等級

2

特別安全対策

移送時にイエローカードの保持が必要。

食品や飼料と一緒に輸送してはならない。

輸送に際しては、直射日光を避け、容器の破損、腐食、漏れのないように積み込み、荷崩れの防止を確実に行う。


重量物を上積みしない。

緊急時応急措置指針番号

131P


15.適用法令


化審法

第2種監視化学物質(法第2条第5項)(政令番号:2監-1026)

労働安全衛生法

変異原性が認められた既存化学物質(法第57条の5、労働基準局長通達)(政令番号:32)

危険物・引火性の物(施行令別表第1第4号)

名称等を通知すべき危険物及び有害物(法第57条の2、施行令第18条の2別表第9)(政令番号:9-87)

毒物及び劇物取締法

劇物(指定令第2条) エピクロルヒドリン及びこれを含有する製剤(政令番号:15-2)

海洋汚染防止法

有害液体物質(Y類物質)(施行令別表第1)

化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)

第1種指定化学物質(法第2条第2項、施行令第1条別表第1)(政令番号:1-65)

消防法

第4類引火性液体、第二石油類非水溶性液体(法第2条第7項危険物別表第1・第4類)

船舶安全法

毒物類・毒物(危規則第3条危険物告示別表第1)

航空法

毒物類・毒物(施行規則第194条危険物告示別表第1)

労働基準法

疾病化学物質(法第75条第2項、施行規則第35条・別表第1の2第4号1・昭53労告36号)


16.その他の情報


参考文献

各データ毎に記載した。


runより:長いなぁ・・・(^▽^;)

しかし見るポイントはそう多くないです、推奨用途及び使用上の制限

エポキシ樹脂、各種溶媒、界面活性剤、安定剤、医薬品原料。

比重(密度)1.175 (25℃,4℃)これは揮発しても空気より重い事を示しています。