・はじめに
環境化学物質と子供の発達との交差環は、公衆衛生科学の新領域である。子供の発達におけるわずかな妨害の潜在的健康影響を把握し始めたのは、ここ 2、3年にすぎない。
これらの過程に対する環境化学物質の影響を理解することに非常に多くのことがかかっている:米国の子供数百万人に注意欠陥多動性障害や自閉症・関連する神経発達障害などの発達障害が影響を及ぼしており、これらの障害の結末は悲劇的であることが多い。障害は一生続くことがあり、家族や社会的・経済的費用は膨大である。
過去 20 年で、注意集中や記憶その他の認識機能への神経生物学研究の爆発的進歩があった。
その他に、正常脳発達のパターンと段階とが現在良く分かっている。この新知識は、内部化学環境に対する、発達中の神経系の特殊なぜい弱性に関して良く理解できるようになった。
ホルモンのような正常に存在する化学物質(同様に鉛や水銀・PCB のような毒物の存在も)の濃度の微妙な変化が、深刻で永続的変化を発達中の神経系に引き起こすことがことが、動物や子供の研究から現在明らかになった。
これらの変化は知能成績の低下と生殖系の変化を導くことがある。
環境中の神経毒化学物質が発達障害で一役を演じていることを示す様々な実験や臨床・疫学研究に支えられてある図式が明らかになる。この概念の意味は深刻である。
もし、私たちが神経発達障害における環境化学物質の役割を理解できれば、これらの障害の防止に向かって着実に歩むことができる。
規制による禁止によって特定の環境化学物質の被ばくを減らし除去し、代わりの物質の開発を促進し、被ばくを最小限にすることにより、いつかは神経発達障害の発生を減らすことができるだろう。
子供が秘めた並はずれた可能性を制限しているものから、障害の一部を防ぐことさえできるだろう。
しかし、このような可能性は多数の時折混乱する科学文献によって分かりにくくなることが多い。
危険な道 In Hram's Wayはその文献の分析である。
テッド=シェットラーと共著者は、複雑な一群の科学情報を保健専門家と科学的知識のある一般人が利用できるようにした、神経発達障害と環境化学物質に関する文章を準備した。
著者らは明確な科学的主張のために証拠を明らかにし、読者が何が分かっており何が推測であるかを理解するのを助ける。
著者らは2 つの関連する観察から始める。(1) 発達障害は米国の子供で一般的であり、(2)これらの障害の原因はほとんど分からない。
危険な道は正常な脳発達を簡潔に考察し、これらの発達過程が環境からの侵害に対して非常に影響を受けやすい理由を探求する。
続けて、実験動物と子供で脳発達を妨害することが知られている環境化学物質を述べた一連の事例研究を強調する。
神経発達障害に関して述べるのに困難なことは、これらの障害が容易に本質が明らかにされないことである。
神経発達障害は、糖尿病での血糖やてんかんでの EEG のような単純な診断検査に不向きである。
発達障害はルーズな臨床あるいは行動学用語で定義され、行動の範囲あるいは幅で示されることが多い。
学習の困難がどの点で学習障害と診断されるのだろうか?不注意が注意欠陥多動性障害とされる時はいつだろうか?臨床家がこれらのことや他の似たような疑問に答える方法を工夫している一方で、命名の問題が神経発達障害のパターンを理解する努力の核心に残っている。
公衆衛生研究努力の最も基本(症例数を単純に数えること)は、異を唱えられた仮定や競合する基準があるつまずきの石として残っている。
とりわけ明快な分析の 1 例として、危険な道は、臨床家や基礎科学者・政策作成者・擁護者・親が共通の理解を作りあげることができるように、名称の問題を注意深く見直した。
このようなことは危険な道が役に立つことである。あらゆる点で、危険な道はこの新分野で最も混乱している領域の一部を突きとめ、根底にある論理と証拠の概略を描く。結果として、この本は幅広い様々な分野代表の間の議論を確実に伝える。
私たちは、広汎な神経行動障害の原因を
突き止めることがほとんど確実に分かる時代の川岸に立っている。
また、取るべき防止方法が可能となるだろう。危険な道は新しい時代のための環境保健の出発点を明らかにした。
非営利健康擁護組織は、現在、健康と環境政策作成で主なプレイヤーである。
1996年の大気清浄法再承認 Clean Air ActReauthorization は、EPA を支持する擁護の努力によって達成された。
国連で非政府組織(NGO)として知られている同じ組織は、国際条約交渉で現在参加者である。
以前は国連と世界保健機構での環境保健討議から閉め出されていたが、ここ10 年間は交渉のテーブルに席を得た。
これを達成したために、非営利擁護団体は政治的により有効に、科学的により専門的になっている。これらの組織の最良のものは、政府と産業に対して別な視点である科学的に信頼できる情報を提供できる。
彼らは矛盾する道しるべが多い出現中の分野でデータを作り、見直すことができる。
環境保健分野よりこれらの能力の利益がはっきりしている所はない。
例えば、EPA が最近結論を出した内分泌かく乱物質スクリーニングと検査諮問委員会のように、現在、擁護組織の専門家は、政府やアカデミー・産業の代表とともに科学的に同等な者として席をめている。
社会的責任のための医師たち(PSR)は、環境保健で科学の現況を一般人と政策作成者の両方のために確立する努力の前線に立つ NGO である。1994 年、PSR はエリック=チビアンが編集した決定的条件:人間の健康と環境 Critical Condition: HumanHealth and the Environmentを発表し、健康と世界環境変化との関係の幅広い概観を示した。
1999 年に、テッド=シュットラーとマリア=バレンチはギーナ=ソロモンとアネッテ=ヒュードルとともに、危険にさらされている世代:生殖の健康と環境を著し、その中で化学物質汚染による生殖健康障害に関する科学を分析した。
ほかの専門能力で、PSRに関係する医師たちは、地球温暖化と感染症再出現の健康への影響、及び生物多様性と種の絶滅の分析にかかわった。危険な道で、PSRは特徴的な明快さを子供の環境保健の分野で発揮した。PSR(大ボストン支部と全米事務所の両方)は、この重要な仕事を依頼するために推薦された。