・地下倉庫の床張り作業中、有機溶剤中毒となる
本災害は、木造家屋新築工事において、地下倉庫の床張りのための下地造作として床板を支えるための部材の接着を行っているときに発生した。
当日の工事は、地下倉庫のコンクリート床面に、部材を貼り付けるべき箇所ごとに下地強化剤を塗布し、その上に接着剤を塗った部材を等間隔に貼り付けていくものであった。
被災者は、朝8時頃から1人で地下倉庫に入り、コンクリート床面の掃除の後、部材貼付けの位置決めのためコンクリート床面上に基盤目状に墨出しを行い、貼付箇所全部に下地強化剤(トルエン30%、メタノール10%、イソプロピルアルコール15%)を塗布した。
続いて、接着する部材の底面に接着剤(メタノール40%)を塗布し、それを貼付箇所に置き、上から手で押さえ付けて接着するという作業を繰り返した。
正午を過ぎても被災者が地下倉庫から出てこないため、上の階にいた発注者が見にいったところ、刺激臭の中で被災者が倒れているのを発見し、病院に運んだ。
その結果トルエン中毒と診断された。
なお、地下倉庫の開口部は、1階に通じるはしご部分のみであったが、この扉は開けたままで作業を行っていた。ただし、特に換気措置は行わず、呼吸用保護具も使用していなかった。
[1] 通風が不十分な場所での有機溶剤業務にもかかわらず、換気が行われていなかったこと。
[2] また、呼吸用保護具も使用していなかったこと。
[3] 有機溶剤作業主任者の資格を持たない被災者が単独で作業を行ったこと。
[1] 局所排気装置または全体換気装置を使用し、十分な換気を行うこと。
[2] 事業者は、作業者に適切な呼吸用保護具を着用させること。
[3] 事業者は、資格を有する作業主任者を選任して、その者の指揮の下に作業を進めさせること。