建設現場で発生した有機溶剤中毒
被災者の所属していた甲社は、主に建設工事において塗装の業務を請け負う会社で、災害の発生した建設工事においては、室内の塗装の業務を請け負っていた。
災害発生当日は、塗装工事の初日で、甲社から工事現場には、被災者A及びBの2人が仕事に来ていたほか、電気工事業社など3社が作業を行っていた。
A、Bの2人は午前9時頃工事現場について、作業用具を室内に運び込み、その後Aは、午前9時10分頃から室内の塗装の作業を開始した。
2人が乗ってきた車には送気マスク等の用具が積まれていたが、それらの用具は運ばなかった。
塗装作業を開始して約1時間経過後、被災者Aが有機溶剤中毒により倒れた。
この時、別の作業をしていたBが、Aが倒れた音を聞いて、大声で「大丈夫か」と叫び、かけつけ、直ちに救急車を呼んだ。
病院で治療したところ、幸い意識を回復したが、後遣症のため10日間の休業となった。
Aが使用していた有機溶剤(塗料)には、第2種有機溶剤であるトルエンが60%含有されており、1時間で約5kgを、使用していた。
ですから、トルエンの使用量は3kg(3,000g)になる。
有機溶剤中毒予防規則で、屋内作業場等のうちタンク等の内部以外の場所において行う業務で、同規則の適用除外となる場合の1時間当たりのトルエンの消費量は下記の式で求められる。(省略)
1 被災者A及びBは有機溶剤作業主任者技能講習を修了していなかったため、有機溶剤中毒についての知識を有していなかったこと。
2 屋内作業場での吹付作業において、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備又は局所排気装置を設けていなかったこと。
(この災害のようなケースの場合は、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備又は局所排気装置を設けることが困難であるから、全体換気装置を設けたうえで、送気マスク又は有機ガス用防毒マスクを使用させて作業を行わせれば、有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備又は局所排気装置を設けないことができる)
1 有機溶剤作業主任者技能講習を修了しているもののうちから、有機溶剤作業主任者を選任し、その者に有機溶剤作業を指揮監督させる。
2 有機溶剤の蒸気の発散源を密閉する設備又は局所排気装置を設ける。
この災害のようなケースの場合には関係する業者と調整をして、全体換気装置を設けたうえで、送気マスク又は有機ガス用防毒マスクを使用させて作業を行わせる。