・地球資源論研究室
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筏(1998)による〔『環境ホルモン』(18-39,142-148p)から〕
『第1章 いま、何が起こっているのか?
1.1 環境ホルモンに対するアピール
環境ホルモンは、公式には「内分泌攪乱物質(ないぶんぴかくらんぶっしつ)」という。
米国のホワイトハウス科学委員会が1997年に主催したワークショップは、この「内分泌攪乱物質」をつぎのように定義した。
生体内ホルモンの合成、分泌、体内輸送、結合、作用あるいは分解に介入することによって生体の恒常性(ホメオスタシス)の維持、生殖、発達あるいは行動に影響をあたえる外来物質
つまり、私たちの内分泌系を乱し、私たちの子孫にまで悪影響をおよぼす外界からの有害物質、というわけである。
内分泌系とは、ひと口でいえば、われわれの生殖、発達、成長、行動などに中心的な役割を果たしているホルモンの活動の場である。
内分泌系を乱す化学物質の存在することは、これまでにも散発的には指摘されていた。
しかし、環境ホルモン問題を世界にアピールしたのは、何といっても、米国の生物学研究者のT・コルボーンと生態学研究者のJ・P・マイヤーズとジャーナリストのD・ダマノスキの三人によって執筆された『Our Stolen Future』(図1-1:略)の1996年における刊行である。
それとならんで環境ホルモンについて警鐘を鳴らしつづけたのは、英国の国営放送BBCである。
このBBCの科学番組をプロデュースしてきたD・キャドバリーも、1997年に『the feminization of nature』(図1-2:略)と題した本を出版している。
ヒトと野生生物の棲息する地球で、いま、何が起こっているのかを知るためには、この二冊を読むのがもっとも手っとり早い。
忙しい読者のために、まずはこの二冊を少しアレンジして紹介しよう。
そこには耳なれない専門用語もでてくるが、それらは次章以降で説明するので、気にしないで先に進んでほしい。