パーキンソン病と農薬7 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・遺伝的素因
 
パーキンソン病は神経毒物によって起こると考えられ、農薬は原因の一つと考えられている。

グルタチオントランスフェラーゼは農薬を含む異物を代謝する。

Menegon et al. (1998)はパーキンソン病の原因でグルタチオントランスフェラーゼの多形性の役割を検討した。
 
GSTの4種類(GSTM1, GSTT1, GSTP1, GSTZ1)を95人のパーキンソン病患者と95人の対照でPCR法によって遺伝子型を調べた。

また、全患者で農薬被ばくについて質問した。
 
GSTP1の分布は農薬に被ばくした患者と対照の間で有意な差があり、AAは対照と患者でそれぞれ54%と18%、ABはそれぞれ42%と56%、BBは4%と15%、ACは0%と10%であった。

ほかのGST多形性では関連が認められない。農薬被ばくと家族歴はパーキンソン病のリスク因子であった。
 
GSRP1-1は血液脳関門にあり、神経毒物に対する反応に影響するのだろう。

そして農薬のパーキンソン誘発影響に対する一部の人の脆弱性を説明する。
 
有機燐剤-症例
 
有機燐系農薬被ばく後に急性で可逆性のパーキンソン様症状を患った5症例が報告されている (18)。

これらの患者の一部にパーキンソン病治療に有効であるL-ドーパ*が投与されたが有効でなかったことから、これらの症例は真性のパーキンソン病ではなく、パーキンソン症候群に分類されるだろう。
 
* L-ドーパ:パーキンソン病の治療薬
 
全症例は、パーキンソン病の家族歴や、神経遮断薬や薬物乱用の経験はなかった。

患者は農薬被ばく後に寡動と姿勢不安定・振戦を示したが、筋強剛は目立たなかった。

次の症例が報告されている。
 
○ 症例1 31才女性、自殺目的で有機燐剤ジメトエートを飲んだ。

急速に、嘔吐や発熱・感覚異常が現れ、入院時には傾眠と無動・硬直を示した。

その後意識は戻ったが、パーキンソン症状のためにベットから離れることはできなかった。

患者は寡動や弱い四肢の筋強剛・手の振戦・仮面様顔貌などを示した。

レブドパ-カルビドパ投与を受けたが、改善がなかった。

4週間に渡って徐々に改善した。8か月後にパーキンソン様症状は消失した。
 
 
○ 症例2 有機燐エーロゾルでアパートを燻蒸した2日後、79才女性がパーキンソン様症状を急激に発症し、進行性の運動の緩慢さや歩行困難・四肢の振戦が現れた。

1か月後に医療を受けた。

診察で、顕著な寡動や猫背・行動を始められない・足の引きずり歩行・四肢の筋強剛・振戦・仮面様顔貌などを示した。

薬物治療は有効でなかった。以後の追跡はされていない。
 
○ 症例3 64才女性。台所と寝室で日に2回10日間有機燐エーロゾルを使った。

その後2日、右足の間欠的な痙攣と手と腕の痙攣が起こった。

以後10日間毎日エーロゾルを使ったが、全ての全身運動の緩慢さが進行し、猫背・手の振戦・表情がないなどの症状が現れた。

筋強剛ははっきりしなかった。

入院2日後、症状は急速に回復し、1週間後に退院した。家に帰った日に再びパーキンソン病様症状が再び現れた。

薬物治療は無効であった。

6週間後に再入院したが、2日で独立歩行ができるようになった。

家に帰ると最初の時と同様に急速に症状が現れた。
 
医者は農薬被ばくとパーキンソン病様症状とが関連している可能性を話し、家族は患者が帰る前に家を清掃した。

しかし、家に帰ってから2日で症状が現れた。

その後、同じ建物の別なアパートに移った。

症状は現れなかった。

数か月後、患者はもとの家に戻ろうとしたが、パーキンソン病様症状が現れ、新しい家に永遠に住まなければならなくなった。

2年間、無症状であったが、衣類をもとの家から持ち帰り着た時に、パーキンソン病様の初期症状に気づいた。

衣類を新しい物と交換する必要があった。
 
○ 症例4 45才女性。症例3患者の妹で、症例3患者が病気であった時に手伝いに行った。

到着後2日で、全ての運動が徐々に遅くなった。

診察で、中程度の寡動・姿勢不安定・全身性強剛が分かった。その他に振戦などパーキンソン病様症状を示した。

家に帰った1週間後、急速に改善し症状はなくなった。
 
○ 症例5 38才女性。症例3の娘。

母親の家に着いてから3日で筋緊張異常性の斜頸が現れた。

まもなくパーキンソン病様症状が現れた。母親の例を知っていたので、直ちに家に帰った。

症状は家に帰ってから数日で消失した。
 
患者は、症例1を除いて、混合剤を使っているため、複数の有機燐に被ばくした。

疫学的研究では有機燐とパーキンソン病の関連が指摘されてきたが、この報告はパーキンソン病様症状と有機燐との関連を示す症例報告であり、患者3の妹や娘で同じような過敏さを示すことから、有機燐に対する脆弱性やパーキンソン病様症状の現れやすさに、遺伝的関連があることも示唆している。