・パーキンソン病
パーキンソン病は振戦(しんせん)麻痺ともよばれ、特徴は寡動(かどう)*と固縮(こしゅく)*・振戦(しんせん)*が主な3つの特徴となっている運動障害である。
* 寡動とは麻痺がないのに自発運動が極度に少なくなる状態をいい、表情がなくなり、膝を組むなどの普通に見られる動作が見られなくなる。
* 固縮とは筋強剛ともいわれ、患者の腕を屈曲する時に、スムースに動かず、歯車を動かす時のような抵抗があるのが特徴である。
* 振戦とは、震えることであるが、全身に起こり、何もしていない時に強く、運動をしている場合には軽減する。
パーキンソン病は人口10万人につき50-100人が罹患しているといわれ、比較的患者が多い病気で、発症は50-60才に多いといわれる。
発病の原因としては、遺伝的素因と環境との両方が考えられている。
200年前にはパーキンソン病はまれであったが、現在では2番目に多い神経変性疾患であるといわれている。
パーキンソン病が発症するかどうかを決定するのに遺伝因子のみの役割は小さいことが双子を比較した研究などで判明し、病因としての環境因子の関与が強く関心を持たれている (2)。
病理学的には、脳の一部(中脳にある黒質とよばれる場所)にある、ドーパミン*を神経伝達物質として使う細胞の脱落(死)が特徴になっています。
パーキンソン病と関連があると考えられている環境中の毒物には、重金属や一酸化炭素・農薬・溶剤・その他の物質がある。
マンガン中毒ではパーキンソン様症状が現れることが昔から分かっていた。
近年では、自分で麻薬を合成し、その中に生じた不純物MPTPによってパーキンソン様症状が現れた米カリフォルニア州学生の事件以来、環境毒物との関係が強く疑われるようになった。
このMPTPはパーキンソン病の機構解明に役立っている。MPTPは除草剤のパラコートに構造が似ているので、農薬とパーキンソン病との関連を調査した研究が行われた (3)。
農薬とパーキンソン病
農薬とパーキンソン病の関連は、最初に疫学研究で示唆され、最近になって実験研究でも証明されるようになった。
実験研究は短期間で結果を出す必要があるため、多量あるいはやや多量が投与されているが、毒性影響が累積的であるならば、人間は数十年(50-60年)の被ばくを受けてから発症すると考えられるため、実験研究を現実離れしていると単純には否定できない。