論文:イミダクロプリド9 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・15.生態系への影響
ミツバチの群崩壊症候群
イミダクロプリドなどのネオニコチノイドはミツバチに影響を与えることが知られている。

ミツバチに対する毒性はネオニコチノイド間で差があり、クロチアニジンやジノテフラン、イミダクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラムは毒性が強く、アセタミプリドやチアクロプリドは毒性が弱いと思われている(Decourtye and Devillers 2010)。
イミダクロプリドによるヒマワリ種子処理がミツバチの群崩壊症候群と関連づけられている。

これに対して、化学企業バイエルのSchumuck et al. (2001)はイミダクロプリドによるヒマワリ種子ドレッシングはミツバチに影響を及ぼさないと主張している。
しかしその後の研究では関連を疑う証拠が出されている。

イミダクロプリドはトウモロコシやヒマワリ、アブラナの手指消毒に特に使われている。

Bonmatin et al. (2005)は2000年から2003 年にフランスの農場から無作為に集めたトウモロコシのイミダクロプリドレベルを測定した。

イミダクロプリドは茎と葉で4.1 μ g/kg、花穂で6.6 μ g/kg、花粉で2.1μ g/kg であった。

この値はヒマワリやアブラナの以前の測定値と似ていた。

これらの値がミツバチの群崩壊症候群の主因と関係がありうると、研究者は結論した。
さらに、Girolami et al. (2009)は、ネオニコチノイド処理種子から育てたトウモロコシの葉から出る滴中のチアメトキサムやクロチアニジン、イミダクロプリドを検出し、その濃度は害虫駆除に使う濃度近くかそれ以上になることを示した。

(ミツバチがこれらの滴を摂取すると、数分以内に死ぬという。イミダクロプリドはミツバチの群崩壊症候群の一因とされている)
イミダクロプリドが単一要因として群崩壊症候群を起こす以外に、ミツバチの病原菌とイミダクロプリドとの相互作用によって、ミツバチに影響を与えていることに言及する研究もあるイミダクロプリドは単胞子虫との共同作用で、ミツバチに影響を与えると報告された。
Alaux et al. (2010)はミツバチがいなくなるのは単一の要因によるものではないと考え、ミツバチの感染症とイミダクロプリドとが影響を与えるのではないかと疑い研究した。

彼らは微胞子虫Nosema *とイミダクロプリドとの共同した作用がミツバチを弱くすることを発見した。

短期的に、両要因はミツバチの死亡率やエネルギー的ストレスを高くする。どちらか単独の要因により、血球細胞数やフェノールオキシダーゼのどちらも影響を受けない。

しかし、巣を滅菌し餌を集めれるのに必要なグルコースオキシダーゼは、Nosema とイミダクロプリドの両要因がある時にのみ減少する。

このNosema とイミダクロプリドは相乗作用を示し、長期的にミツバチコロニーが病原に影響されやすくすることを示す。

このことは総合防除で有害昆虫を殺すために使われる化学物質と感染生物との間の相互作用を示す証拠であると、Aflaux etal. (2010)は考えた。
*微胞子虫:microsporidia。動物の細胞中に寄生する単細胞真核生物。特殊化した菌類と考えられている。

動物を衰弱させることが多い。

昆虫や魚類などに寄生する病原体が知られる。哺乳類でも自然治癒性の下痢の病原体として普通に存在し、日和見感染を起こす病原体もある

ミツバチ行動への影響
ミツバチのイミダクロプリド感受性は季節によって異なることが知られている。

Decoutye et al. (2003)は臭いに対するミツバチの吻の伸張反応を用いて、イミダクロプリドの最小影響濃度を調べた。

この結果夏にはイミダクロプリドのLEOC は小さく(12 μ g/kg)、冬には大きい(48 μ g.kg)と、夏に冬よりも強い影響を及ぼすことが分かった。

(吻「ふん」:この場合はミツバチの突起状の口先をいう)

ミツバチ行動に対するイミダクロプリドの影響は冬より夏に強いと報告されたイミダクロプリドは種子ドレッシングに使われているが、フランスの養蜂家はヒマワリを餌としているミツバチの異常な行動とイミダクロプリドによる種子処理との関係を疑っている。
Laurent and Rathahao (2003)はイミダクロプリド製剤(ガウチョ)で処理したヒマワリで、放射性イミダクロプリドの分布を研究した。

ヒマワリは種子に使用した10%以下のイミダクロプリドを吸収し、吸収した75%が子葉に見られた。

抽出した放射能の50%がイミダクロプリドのもので、残りの50%は代謝物であった。

その一部の代謝物はイミダクロプリドと同等の毒性があった。

花粉中のイミダクロプリド濃度は13 ng/g であった。
この結果は、ガウチョ由来のイミダクロプリドはヒマワリの花粉を汚染しており、イミダクロプリドが植物内を移動することを示している。
(イミダクロプリドはミツバチの嗅覚や視覚による学習に悪影響を与え、採餌活動に致死量の約1/200 で悪影響を与える)
Decourtye et al. (2004)は実験条件と半野外条件で砂糖溶液に加えたイミダクロプリド(24 μ g/kg)とデルタメトリン(500 μ g/kg)をミツバチコロニーに与えた。

この場合、デルタメトリンで死亡が認められたが、イミダクロプリドでは死亡はなかった。

イミダクロプリドやデルタメトリンで汚染した糖蜜により、ミツバチは餌をあさることや巣箱に入ることが減少した。

イミダクロプリドはミツバチの嗅覚による学習に悪影響を与えたが、デルタメトリンは学習に影響を与えない。
Coline et al. (2004)は、昆虫が餌をとる行動への影響は致死量以下でも変化するので、自由に飛んでいるミツバチで様々な変化を定量的で正確に調べようとした。

彼らの観察では、浸透移行性殺虫剤であるイミダクロプリドは半数致死濃度の70 分の1 という低レベルで、活発なミツバチの割合を低下させ、さらにその1/3 で餌場を訪れる回数を減らすことを発見した。
Yang et al. (2008)は低レベルのイミダクロプリドがミツバチの働き蜂の餌をとる行動に対する影響を与えるか調べた。

働き蜂が同じ餌をとる場所に再び訪れるまでの時間を測定した結果、イミダクロプリドに被ばくした働き蜂は再訪する時間を多く必要とし、その遅れはイミダクロプリド被ばくレベルに関係があることを発見した。

高レベルのイミダクロプリドにより働き蜂は行方不明となったり、再訪するのが次の日になったりした。

以上の結果はイミダクロプリドが餌をとる行動に影響を及ぼすことを示すと、Yang et al. (2008)は考えた。
さらに、ミツバチの視覚による学習にイミダクロプリドが悪影響を与えると、Han et al.(2010)は報告している。
以上の所見に対して、バイエルのSchmuck (2004)は、イミダクロプリドやその代謝物はミツバチの死亡率や行動異常と関係がないと主張している。

またNguyen et al. (2009)はイミダクロプリドによるトウモロコシ種子処理がミツバチに悪影響を与えないと考えている。
米国でも農作物の受粉をするミツバチの減少が問題になっている。

Mullin et al. (2010)はミツバチの蜜ロウや花粉、ミツバチ自体などを調べ、121 種類の農薬を検出した。調べた887 サンプル中約60%に少なくとも1 種類以上の浸透移行性農薬が存在した。

見つかった農薬はフルバリネートやクマホス、クロロタロニル、アルジカーブ、カルバリル、クロルピリホス、イミダクロプリド、ボスカリド、キャプタン、マイクロブタニル、ペンデメタリン、アミトラズなどが検出されている。

これらの農薬の影響は今後検討されるべきであると、Mullin et al. (2010)は述べている。

昆虫個体群への影響
土壌に使用されたイミダクロプリドは、植物中に入り、蜜に移動し、寄生バチAnagyrus pseudococci を殺すことが報告されている。

またピンクレディービートルColeomegilla maculata やヤマトクサカゲロウChrysoperla carnea の生存に悪影響を与え、行動にも影響を及ぼすことが報告されている(Krischik et al. 2007)。

(使用されたイミダクロプリドは他の昆虫やミミズなどにも影響を及ぼすと報告されている)
カナダのKreutzweiser et al. (2008)は、ツヤハダゴマダラカミキリAsian longhorned beetleの駆除のためにサトウカエデにイミダクロプリドを使った場合、落ち葉中のイミダクロプリドが葉を分解する生物に影響を与えるかどうか調べた。

イミダクロプリドは野外のカエデにある現実的な濃度で、葉を細かくする水生昆虫やミミズの生存には影響を及ぼさないが、悪影響を与えることが報告された。

これらの動物の摂食が減少し、葉の分解が減少し、ミミズで体重減少が見られ、微生物による分解も減少した。

これらの結果は、イミダクロプリドで処理されたサトウカエデの葉は、標的以外の生物に影響を及ぼすことにより水中や陸上で天然の分解を減らすことを示している。

水生動物への影響
ミジンコの慢性毒性研究で、イミダクロプリドとノニルフェノールとの間で相乗作用が見られている(Chen et al. 2010、次章にある他の化学物質との相互作用を見よ)。

農作物への影響
イミダクロプリドが稲の発芽および初期生長に及ぼす研究がある(Stevens et al. 2008)。

イミダクロプリドは播種前の使用では発芽に影響を及ぼさないが、発芽中にイミダクロプリドに曝すと悪影響が強くなり、品種によって感受性が異なると報告している。

イミダクロプリドは発芽中の稲に悪影響を与えることがある

イミダクロプリド耐性

イミダクロプリドに対する昆虫の耐性の発生が問題になっている。Gerry and Zhang (2009)はイエバエでイミダクロプリド耐性を調べた。

カリフォルニア州で2003 年にイミダクロプリドが使われ出してから、その過剰使用により5 年間で、かなりのイエバエが耐性を獲得したことが分かった。

イミダクロプリド使用により耐性昆虫が出現している