フェニトロチオンの毒性6 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・9. 変異原性
DNA 阻害が微生物で100 ppm フェニトロチオンの量で見られている。

マウスで1 g/kg フェニトロチオン注射は骨髄細胞や精原細胞で染色体異常の割合を増加させない。

フェニトロチオンはS. typhimurium (エームス試験)を含む微生物で、突然変異を誘導する(Hazardous SubstancesData Bank 2000)。
フェニトロチオンの変異原性をSalmonella typhimurium と大腸菌で調べた。

Salmonellatyphimurium 系統TA98・TA1535・TA1537 と大腸菌WP2uvrA で、変異原性でないことが分かったが、Salmonella typhimurium TA100 でのみ弱い変異原であり、S9 ミックスによって強められた。
TA100 系統で観察された変異原性はニトロレダクターゼ欠損系統TA100 NR では発現せず、トランスアセチラーゼ欠損系統TA100 1,8-DNP6 で減少した。

フェニトロチオンの変異原性は、Y79チャイニーズハムスター肺細胞でhypoxanthine-guanine phosphoribosyltransferase (hgprt)の遺伝子を用いる遺伝子変異検定によっても調べた。

フェニトロチオンは、S9 ミックスの存否にかかわらず0.01 から0.3 mM の範囲の量で、6-チオグアニン抵抗性突然変異細胞の増加を誘導しなかった。これらの結果は、TA100 の細菌ニトロレダクターゼによるフェニトロチオンが活性な形への還元が、TA100 でフェニトロチオンの変異原性発現に必須であること、およびTA100 の細菌トランスアセチラーゼも変異原活性化の過程で重要な役割を果たしていることを示す(Hazardous Substances Data Bank 2000)。
核膜の障害と細胞の染色能の低下・異常な有糸分裂の増加が、妊娠のはじめ15 日間毎日LD50の0.1 および0.2 を投与されたラットの胎児から採取した、線維芽細胞の単層培養で報告されている(Hazardous Substances Data Bank 2000)。
フェニトロチオンは一部の微生物系とラットの4 世代研究で変異原影響に関して陰性である。
染色体異常は人間の白血球とハムスターの肺細胞で、細胞遺伝学的分析により観察されている。
姉妹染色分体交換は人間の胚細胞とハムスターの肺の細胞で観察されている(HazardousSubstances Data Bank 2000)。
ショウジョウバエとマウスで変異原影響は見られない(Extension Toxicology Network 1995)。
EPA の遺伝毒性計画で、フェニトロチオンはショウジョウバエの性連鎖致死検定や齧歯類の優性致死検定に関して結論が出ず、宿主媒介検定で陰性であった(Hazardous Substances DataBank 2000)。
有機リン被ばく労働者の細胞遺伝学的研究は、染色体異常頻度の可能性を示しているが、証拠は決定的なものではない(Hazardous Substances Data Bank 2000)。
慢性的に有機リン被ばくをしていたイスラエル人家族の二世代は、第3 染色体でCHE 遺伝の「サイレント」対立遺伝子の100 倍の増幅があった。

第2 染色体上のほかの遺伝子増幅がないことは、CHE 遺伝子の増幅は有機リン被ばくに対する特有な応答であることを示している(Hazardous Substances Data Bank 2000)。
フェニトロチオンの変異原性はサルモネラ菌TA83 とTA100 で示されている(Goto et al.2004)。

変異原性やプロモーション活性を持つ物質は可能な限り避けるべきだとしている(Goto etal. 2004)。

分解産物の変異原性

フェニトロチオン分解産物の変異原性は、好気的分解では増加しないが、嫌気的分解や光分解で増加することが知られている(Matsushita et al. 2008)。
Matsushita et al. (2002)は岐阜大学の近くの青ネギ畑から得たフェニトロチオンを分解する細菌による好気的および嫌気的なフェニトロチオン分解産物の変異原性を、サルモネラ菌YG1029 とYG1042 を用いて調べた。
フェニトロチオンは12 日後にほぼ完全に分解され、嫌気的分解産物は変異原性を示した。

変異原性の一部は嫌気的分解中に発生するアミノフェニトロチオンよる。
フェニトロチオンを水田中の細菌と培養した場合、変異原性の多くはアミノフェニトロチオンによるとされている(Matsushita et al. 2003)。YG1029 を用いた試験で、変異原性は生分解中に生じたアミノフェニトロチオンによると思われる。

サルモネラ菌YG1029 とYG1042 の変異原性は培養6 日後に減少した。

培養3 日で変異原性の要因とし、てアミノフェニトロチオンはYG1029で全変異原性の73%、YG1042 で61%を占めた。

それ以外はまだ同定されていない変異原性を生じる代謝物は、培養20 日で全変異原性のYG1929 で61%、YG1042 で61 %を占めた(Matsushitaet al. 200 3)。

この研究は個々の物質ではなく、全分解産物の変異原性を考慮する必要を示す。
この嫌気的分解によるフェニトロチオン分解産物の変異原性は、細菌とともに好気的に培養すると減少する。

しかしこの変異原性は22 日後にも完全に消失しない(Matsushita et al. 2005)。
フェニトロチオン溶液の嫌気的分解産物による変異原性以外にも、光分解産物による変異原性も確認されている。

Matsushita et al. (2006)はフェニトロチオンの光分解中のフェニトロチオン含有溶液の変異原性を調べた。

日光照射を行い、変異原性を調べた。

15 日間の光分解中に,フェニトロチオンはほぼ完全に分解され、多くの分解産物が生じた。

塩基対置換型を検出するサルモネラ菌系統で溶液の変異原性は減少したが、フレームシフトを検出する系統では変異原性の増加が見られた。
水道水などは塩素処理される。

フェニトロチオンの塩素処理により3-メチル-4-ニトロフェノールが形成され,これはフェニトロチオンよりも19 倍変異原性が強い(Kishida et al. 2010)。