農薬使用と前立腺癌 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・農薬使用と前立腺癌
 
前立腺癌と農薬被ばく [Mills 1998, Alavanja et al. 2003] との関連が報告されている。
 
カナダのモリソンらの研究グループはカナダのマニトバ州などの45歳以上の農業者で調査を行い、前立腺癌死亡と除草剤散布面積との間に統計的に有意な関連を発見した [Morrison et al. 1993]
 
スウェーデンのディッチとウィクルンドは、1965年から1976年の間に免許を得た約2万人の農薬使用者を1991年まで平均21.3年間追跡し、集団で前立腺癌のリスクを分析した。

この研究では統計的に有意な前立腺癌発生率の増加を発見した [Dich and Wiklund 1998]。
 
米国のマイアミ大学医学部のフレミングとそのグループは農薬の長期的影響を知るために、免許を持った農薬使用者で標準化死亡率を比較した。1975年から1993年の間に、調査対象33,685人中1874人が死亡した。

一般に、農薬使用者はフロリダの一般人より健康であったが、前立腺癌による標準化死亡率は2.8倍と有意な増加を示した。[Fleming et al. 1999]
 
ケーラーバーネらは、1983年から1994人に発表された論論文について、農業者の前立腺癌リスクを再分析した。

この結果、ほとんどの研究が農業と前立腺癌の関連を示しており、このことは、ホルモン活性のある農業化学物質被ばくによる可能性を示した。[Keller-Byrne et al. 1997]
 
米国のアラバンジャらの研究グループは、米国のアイオア州とノースカロライナ州の農薬使用者5万5千人以上を対象として、45種類の農薬と前立腺癌発生との関連を調べた。

標準化した前立腺癌発生率は1.14と有意に増加していた [Alavanja et al. 2003]。
 
これに対して、ベルギーのヤンセンズのグループは、ホルモンの影響を受けやすい乳癌と前立腺がを調べたが、農薬との関連は見られなかったことを報告した。

しかし、伝統的なジャガイモ栽培をしている地域で乳癌と前立腺癌が多いことを発見し、注意と研究が必要であることを指摘している [Janssens et al. 2001]。
 
 
農薬の種類と前立腺癌
 
中部カリフォルニア癌登録のミルズは、カリフォルニア州黒人労働者で前立腺癌発生率とアトラジン及びキャプタンとの関連を発見している。[Mills 1998]。

ミルズとヤングは、比較的高いレベルの有機塩素農薬(リンデン・ヘプタクロル)やくん蒸剤(臭化メチル)、トリアジン除草剤に曝露すると、前立腺癌に罹患するリスクが増加することを示した [Mills and Yang 2003]。
 
米国立癌研究所のアラバンジャらのグループは、前立腺癌と45種類の一般的な農薬との関係を、55,552人の農薬を使う人で調べた。農薬を扱う人の標準化罹患率は1.14と有意に高かった。

臭化メチル及び年齢が50歳以上で塩素系農薬を使用した人で前立腺癌の発生が有意に高かった。

家族に前立腺癌があった人でのみ罹患率を増加させていた農薬(クロルピリホス及びコーマホス・フェノホス・フォレート・ペルメトリン・ブチレート)もあった。

このことは農薬と遺伝的要因の関連を示すものと思われる 。

統計的に有意(p<0.10)ではなかったが、家族に前立腺癌が会った人でオッズ比を高めていたのは、EPTC(チオカーバメート除草剤)・ターバホス・ダイカンバ・ジクロルボス・アルジカーブ・カーボフランであった [Alavanja et al. 2003]。
 
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以上のように、農薬と前立腺癌との関連が幾つかの研究で示されており、特に一部の種類の農薬と強い関連があること、遺伝的背景があるとさらに発症しやすいこと等が示されてきた。

これらのことは、前立腺癌に限定されないが、癌のリスクを減らすためには農薬などの不用意な被ばくを避けることが必要であり、家族に前立腺癌を患ったものがいる場合に特に農薬を避ける必要があることを示している。