・出典:電磁波問題市民研究会
http://www.jca.apc.org/tcsse/index-j.html
電磁波研会報・第76号 2012.5.27 発行
兵庫県川西市の健康調査と電磁波過敏症について
加藤やすこ(ジャーナリスト)
電磁波過敏症
電磁波過敏症という病気が増えている。
このペースで増えると2017年に総人口の50パーセントが発症するというグラフを、先ほど荻野晃也先生が示した。
花粉症を含む鼻炎アレルギーの発症率は、今や43パーセントだということを考えると、その数字が実現してしまう可能性があると思う。
電磁波過敏症の主な症状は、不眠や中途覚醒などの睡眠障害、頭痛、めまい、集中力がなくなる、記憶力がなくなる、倦怠感、疲労感、動悸がする、頻脈、不整脈、いらいら、不安感、食欲不振、下痢、吐き気、嘔吐などがある。
一つしか症状が出ない方もいれば、複数の症状を持っておられる方もいる。
これは不定愁訴という良くありがちな症状で、大したことはないのかなと思われるかもしれないが、電磁波の強い環境では、こういった症状に24時間悩まされることになる。
電磁波過敏症は、1970年代に最初に北欧で、パソコン労働者の皮膚が赤くなる、かゆみ、痛みなどが報告された。
2005年、世界保健機関(WHO)は、電磁波過敏症という、新しい疾患が存在することを公式に認めたが、電磁波過敏症と電磁波との因果関係については、消極的な見解を示しており、精神的な影響を示唆している。
総務省の見解もWHOに基づいており、防護指針をすこし超えても、「ただちに影響があるというものではありません」と言っている。
放射線とまったく同じ言い分だ。
専門医は、発症者に以下をアドバイスしている。
被曝によって体内に活性酸素が増えるので、抗酸化物質(必須ミネラル、ビタミンを適度な量)を摂取すること。
食事療法。
入浴療法。歯の詰め物を取る。
できるだけ被曝を避ける。
携帯電話基地局の近くでは、24時間のべつまくなしに被曝する。携帯電話の使用者だけでなく、胎児、赤ちゃん、高齢者、アレルギーなど病気の人もだ。
電磁波対策研究会では、2009年に発症者へアンケートをとった。発症原因については、携帯・PHS基地局との答えが最も多く(70人中28人)、2番目のパソコン(15人)の倍であり、非常に大きなウエイトを占めていると思う。
2002年、米国政府の障害問題に関する委員会が、電磁波過敏症と化学物質過敏症について、アメリカ障害者法の下の障害者として認められるであろうと連邦政府の文書の中で公式に発表した。これを受けて、アメリカ国立建築科学研究所が、IEQ(インドア・エア・クオリティ)という報告書を出した。
これは過敏症の方が建物をちゃんと利用できるように、公共施設や商業施設にクリーンエアルームを作ろうということで、クリーンエアルームの条件として、以下などを挙げている。
禁煙施設で香料がない
最近に改築や改装をしていない
携帯電話の電源オフ
コンピューターなど電気設備の電源を切るかプラグを抜くことができる
蛍光灯を切ることができる
トイレや通路にも同様の配慮を求めている。
欧州評議会議員会議
欧州評議会議員会議(PACE)は昨年5月、電磁波被曝の削減を求める報告書を採択し、加盟47国に勧告した。
欧州評議会は主に国際基準の策定を主導しており、「刑を言い渡された者の移送に関する条約」は日本も批准している。
日本はオブザーバー国として参加しているので、無関係ではない。
報告書は、以下などを勧告した。
長期曝露のための予防的基準を0.1マイクロワット/平方センチ(日本の1万分の1)。
将来的には0.01マイクロワット/平方センチ(日本の10万分の1)
若者や子どもへの意識向上キャンペーン実施
電磁波過敏症の人のために電磁波フリーのエリアをつくるなどの対策をとる
学校での携帯電話や無線LANの禁止
携帯電話や無線LANなどのアンテナの位置を地方自治体、住民、市民団体と相談して決める