・出典:環境汚染問題 私たちと子どもたちの未来のために
http://www.maroon.dti.ne.jp/bandaikw/
・免疫系の異常
免疫系は異物に対して体を守り、感染症と癌組織の増殖を監視することに役立っています。
科学界内では、有毒化学物質が免疫系を抑制するということに対する認識が深まっています。
多くの科学的証拠をレビューした最近の報告では、現在世界中で使われている農薬は免疫系に障害をあたえるという結論を出しています。
動物実験では、農薬、特に有機塩素系と有機隣系殺虫剤は免疫系を抑制することが証明されています。
人間での農薬の免疫毒作用の証拠は限られています。
農薬が免疫系の機能をかく乱する機構やこのような障害と人間の臨床的疾患の発生に関するデータも多くありません。
広く使用された有機塩素系農薬ペンタクロロフェノール(PCP)に関する研究が、子どもの農薬被曝と免疫系機能障害・病気に罹りやすさとの関連を解明するために始められました。
PCPは木材保存料として最も広く使われ、PCP処理丸太で建築された住宅の室内空気中で検出されます。
PCPの混入物、ダイオキシンは実験動物の免疫系を抑制することが知られています。
PCP処理丸太で建築した住宅に住む家族は、細胞レベルで様々な免疫毒性が現れていることが知られています。
さらに、家族構成員の聞き取り調査で、「風邪およびインフルエンザ様病気が多く発生し、長引く」ことが分かりました。特に訴えていたのは、吐き気やめまい・皮膚の発疹・頭痛・アレルギーでした。
人間の血液と尿中PCPレベルに関する最近の研究では、PCP処理ログハウス居住者の血清中レベルは通常の住宅に住む人のPCPより高く、小児の血中PCPレベルは親の2倍近いことが分かっています。
カナダ北部、イヌイットインデアンの乳児は感染に弱く、30倍も多く髄膜炎が発生していることが分かりました。
乳児の免疫系は母親の母乳中にある高濃度の有機塩素系農薬やそれ以外の残留性化合物により抑制されていることが疑われています。
イヌイットの伝統食には、残留性有機塩素化合物を生物濃縮し拡大する北極の海棲ほ乳類があるため、母乳の残留農薬が高いと考えられています。
前ソビエト連邦のモルドバで行われた疫学研究では、農薬被曝と感染症発生率の増加とが関連するといわれています。
ある研究では、最も多く農薬散布をしている村の10代の少年は、使用量が少ない地域の少年より、呼吸器感染率が5倍、消化器感染率が3倍高いことが分かりました。
このため、研究者は健康な子どもの免疫系の研究をしました。
高度な被曝をした乳児と子どもの約80%では免疫学的パラメーターの5つ以上で異常が見つかりました。