稲作に農薬はいらない3 | 化学物質過敏症 runのブログ

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(3)温湯処理と注意点種子の病害虫防除には塩水選だけでも大丈夫ですが、種子の量が少ない場合や完全に病害菌を防除したい場合には、種子の「温湯処理(おんとうしょり)」を行ないます。

温湯処理は、種子を60℃の温湯に5分~10分間浸漬することによって種子表面の細菌類を殺菌する方法です。

温湯処理の原理は、60℃という細菌類のタンパク質が変性し死滅する温度で種子表面の病害微生物を殺菌するのですが、その熱が種子の内部にある胚芽部分のタンパク質を変性させるまでのわずかな時間差を利用するものです。
このため温度だけでなく5~10分(最適は7分)という浸漬時間は正確に守る必要があります。

また温湯処理では、処理を行なう種子が十分に乾燥して休眠していることが重要です。

水分を含んでいたり、発芽のための酵素が活動状態にある種子は、温湯で発芽力を失います。
実際にこの方法を行なう場合に、最も大変なのは60℃の一定な湯温をいかに確保するかです。

そのためには充分な量の温湯と保温力のある大きな容器にするか、温度設定のできるボイラーなどで60℃~65℃の湯を補給しながら行なうなどの工夫が必要です。

近年、温湯処理を行なう専用機器も製品化されています。
以下は、私の行なっている温湯処理の方法です。

お風呂のボイラーを65℃に設定し、発砲スチロールの箱にお湯をかけ流ししています。

大きめの網袋に入れた種籾を、そのお湯の中に一気に浸し、2本の棒状温度計で種子を撹拌します。

時計で正確に7分を測定し、お湯から引き上げた種籾は、すぐに冷水に浸します。
また、温湯処理後は次の点に注意してください。

温湯処理によって種籾は無菌状態になっています。種籾を乾燥させ保存する場合には、再び病害菌の感染を防ぐために、新品の袋を使用してください。

そのまま連続して育苗のための浸種作業に入る場合は、再汚染を防ぐために別の容器(水槽)を使用します。
温湯処理は、病虫害の防除だけでなく発芽率を向上させる作用も確認されています。

これは、種子表面の発芽抑制物質を分解するためではないかと考えられます。
この温湯処理の原理は、1860年にフランスの細菌学者ルイ・パスツールによって発見されたと言われ、「パスツール法」(パスチャライゼーション)などと呼ばれています。

この低温殺菌法は、現在のワインの殺菌方法や低温殺菌牛乳などに利用されています。

しかし、パスツールがこの低温殺菌方法を発見する300年も前の1500年代に、日本では酒造りをしていた杜氏が、日本酒の保存技術として「火入れ」と呼ばれる低温殺菌法を行なっていました。

このことは、温度計のない当時、杜氏たちが自らの手の皮膚感覚だけで正確に60℃の温度測定をしていたことになります。

人間の感覚のすごさと日本の伝統技術の高さが分かります。