精製植物油のアレルゲン性 | 化学物質過敏症 runのブログ

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出典:食品・薬品安全性研究ニュース
http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzensei.htm


精製植物油のアレルゲン性

食物アレルギーは, 食物中の特定の成分 (ほとんどがタンパク質) が免疫細胞によって認識されることで起こる.

初回曝露では (ときに誕生前のこともある) 目立った反応を伴わずに感作されるが, 感作された人の一部が後に食物アレルギー反応を起こす.

食物アレルギーは抗原特異的に記憶され,通常, 繰り返し曝露によって反応の現れる早さや程度が増す.

食物アレルギー反応は比較的少量のアレルゲンによって誘発される.

様々な免疫機構の関与が考えられているが, 最も関連が深いのは, ヒトのアナフィラキシーの原因抗体となる IgE である.
 市販されている精製植物油にも, その由来植物にアレルゲン物質が含まれている例がある.

油の場合は精製によってタンパク質がほぼ完全に除去できると考えられるが, 微量に残存するアレルゲンタンパク質を含む可能性が拭いきれない.
 アレルゲンの量を知ることは, 特定の食物のリスクを知るために必須であるが, 食物アレルゲンの閾値はほとんど知られていないうえ, 閾値には個人差がある.
 油によるアレルギー反応は稀で, 原因の大半はピーナッツ油であるが, 大半の情報は臨床例の報告であり, 疫学調査はまだ例が少なく, 発生率を調べたものもない.
 1991年, Moneret-Vautrin らはピーナッツ油が即時アレルギー反応を引き起こすことを示し, 別途, ピーナッツ油が湿疹を悪化させた4症例 (1994) でもそれを確認した.

1998年, 同グループが4人のピーナッツアレルギー患者で行った二重盲検食物チャレンジでは, 5mL のピーナッツ油摂取で陽性反応が認められた.

この報告には油の精製の程度が明らかにされておらず, チャレンジ方法の詳細な記述もなかったが, 別の研究で, さらに5人のピーナッツアレルギー患者を対象に二重盲検食物チャレンジを実施し, 精製されたとみられるピーナッツ油でも陽性となることを見出した (1998).
 Gueant ら (1995) はピーナッツで感作された人の白血球がピーナッツ油抽出物やミセル試料によってヒスタミンを遊離することを示した.

ヒマワリ油, ダイズ油あるいはナタネ油も白血球からのヒスタミン遊離を誘発したと報じている.

これらの結果からは, 植物油に交差反応性タンパク質が存在するとも考えられるが, 細胞提供者がピーナッツ以外の食物に対してもアレルギーであったか否かは説明されていない.
 Hourihane ら (1997) は, 60名のピーナッツアレルギー患者で, 未精製または精製ピーナッツ油による無作為クロスオーバー二重盲検食物チャレンジを行い, 大半のピーナッツ過敏性患者において精製ピーナッツ油は脅威でないことを示した.
 ダイズ油に対するアレルギーは実地医家の間には気にする人は多いが, ダイズ油の消費が多い割に, 実例は稀に起こるアナフィラキシーショックだけである.

ダイズ油を含むエマルジョンを静脈内投与した際にアナフィラキシーショックが起こることがわかってはいるが, これを食物アレルギーと呼ぶのは難しい. Bush ら (1985) は, ダイズ油はダイズアレルギー患者で反応を誘発しなかったと報じている.

スウェーデン国立食品局に記録されている重症食品アレルギーの症例の約25%がダイズに関するものであるが (ピーナッツは33%), ダイズ油が原因物質と目された例は一つもなかった.
 ヒマワリ油, ゴマ油およびココナッツ油アレルギーについては少数例の報告がある. ゴマ油は風味を重んじるため, あまり精製していないのが特徴で, アレルゲンが多いと思われる.

ココナッツ油摂取によるアナフィラキシーは2例の報告がある. これらはクルミとの cross-reactivity が原因と考えられている.
 その他の主な食用油, コーン油, ヤシ油およびヤシ殻油で誘発されたアレルギー反応の報告はない.

もともとこれらの種に含まれるタンパク質にはアレルゲン性がないようである. また, これらの油は比較的大きな少数の製油会社でしか生産されておらず, 一貫して高品質であることも原因と考えられる.