ラテックスと食物との交叉反応性 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・シンポジウム10
ここまでわかったアレルゲンの交叉反応性
司会者:宇理須厚雄1), 猪又直子2)(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院小児科1), 横浜市立大学大学院医学研究科環境免疫病態皮膚科学2))

S10-3.ラテックスと食物との交叉反応性~ラテックス―フルーツ症候群~

矢上晶子1), 松永佳世子2)
国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部1) 藤田保健衛生大学医学部皮膚科2)


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 ラテックス-フルーツ症候群とは,天然ゴム製品が原因である即時型アレルギーのラテックスアレルギー患者の一部が,ある種の植物性食品に対しても同様の症状を起こす現象を指す.

この症候群は,花粉症に伴う食物アレルギー症候群と同様の発症機序(クラス2食物アレルギー)で引き起こされると考えられている.

原因となる果物や野菜は種の枠を越えており,非常に幅広い食品がリストアップされている.

臨床症状としては,摂取後の口腔内違和感やピリピリ感などの口腔内症状から全身性蕁麻疹やアナフィラキシーショックなどの重篤な全身症状を呈する場合まで様々である.
 現在までに13種の蛋白質がラテックスアレルゲンとして正式に登録・命名されており,その多くがゴムの木の生体防御に関わる蛋白質である.

生体防御蛋白質は進化の過程でその構造がよく保存されている.

したがって,ゴムの木の生体防御蛋白質に感作された患者は,他の植物が作り出す,構造が類似した生体防御蛋白質に対しても即時型アレルギー反応を起こし得る.

実際,生体防御蛋白質の一種(pathogenesis-related protein(PR)-3ファミリー)であるクラスΙキチナーゼが,アボカドやクリ,バナナといった植物性食品に含まれる重要な交叉反応性アレルゲンであることが明らかにされている.

クラスΙキチナーゼは,主要なラテックスアレルゲンの一つであるヘベイン(Hev b 6.02)に相当する構造単位をN-末端部に含んでおり,このヘベインに類似した部分構造が,抗ヘベインIgE抗体に対するエピトープを提供する.

そのため,ヘベインに対して感作が成立した患者はこの酵素を含む様々な植物性食品に交叉反応を示す可能性が生じる.

この他にも,Hev b 7やHev b 8などもラテックスーフルーツ症候群の原因となるため,医師はラテックスアレルギー患者に対してラテックスーフルーツ症候群について適切な生活指導を行う必要がある.
 今回の講演では,ラテックスーフルーツ症候群における交叉反応性の機序や現在までに明らかにされた交叉反応性抗原について概説したい.

第57回日本アレルギー学会秋季学術大会 2007年10月開催