・心理療法
心理的因子が関係していることが明らかな気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー患者には薬物療法と平行して、心理療法を施す必要がある。患者の人格(パーソナリティー)の問題よりも現実のストレスが強い場合には、心身の問題に気づかせ、環境調整や生活指導を行い、心身のリラックス方法として自律訓練法を習得させる。患者の人格に問題がある場合には、心身医学を専門とする精神科医師、心理療法士に紹介する。専門的な治療法には、自律訓練法、交流分析法、行動療法、認知行動療法、精神分析的精神療法、家族療法などがある。
スギ花粉症
スギ花粉の飛散時期の2~3月に、目の痒み、くしゃみ、鼻水、鼻閉塞などの症状が出現する。スギ花粉の大きさは直径30μあるため、鼻腔などの上気道の粘膜面に補足され気管支以下の下気道には到達しないので喘息症状は少ないが、咽頭の違和感から咳を訴える患者もある。スギ花粉のアレルゲンは花粉の表面にあり、Cryj1とCryj2が同定されている。また、スギ科とヒノキ科には共通抗原性があり、スギ花粉患者はヒノキの花粉にも反応し、ヒノキ花粉の飛散する5月まで症状が続くことが多い。
スクラッチテスト
アレルゲンを見出すためのアレルギー検査には、患者の生体反応を利用した方法と採血による試験管内検査がある。生体反応試験は皮膚反応試験、眼反応試験、鼻粘膜反応試験、抗原吸入試験など、血液試験には特異的IgE抗体の測定がある。スクラッチテストは即時型アレルギーをみる皮膚反応試験の一つである。消毒液で清拭した皮膚(前腕、背中など)に針で2~3ミリほどの引掻き傷をつけ、そこにアレルゲン液を滴下して15分後に出現する皮膚の反応(発赤、膨疹)を観察し、陽性、陰性を判定する。
ステップ1
喘息の長期管理における段階的薬剤投与法では、喘息患者の重症度に応じて4段階の薬物治療を決定する。そのうちステップ1は重症度の軽症間欠型に対応している。薬物治療は、長期管理薬として低用量の吸入ステロイド薬、テオフィリン徐放薬、ロイコトリエン拮抗薬、抗アレルギー薬(トロンボキサンA2阻害・拮抗薬の連用考慮。メディエーター遊離抑制薬/ ヒスタミンH-1拮抗薬/ Th2サイトカイン阻害薬)の投与を考慮する。発作治療薬として短時間作用性気管支拡張薬(吸入β2刺激薬、テオフィリン)の頓用。
ステップ2
喘息の長期管理における段階的薬剤投与法において、ステップ2は重症度の軽症持続型に対応した薬物治療である。長期管理薬:低用量の吸入ステロイドの連用、テオフィリン徐放薬の連用、長時間作用性貼付/ 経口/ 吸入β2刺激薬、インタール吸入の連用を併用。アトピー型喘息には上記薬物に抗アレルギー薬の併用。発作治療薬:短時間作用性気管支拡張薬(1日3~4回まで)。
ステップ3
喘息の長期管理における段階的薬剤投与法において、ステップ3は重症度の中等症持続型に対応した薬物治療である。長期管理薬:中用量の吸入ステロイドの連用にテオフィリン徐放薬、長時間作用性の貼付/ 経口/吸入β2刺激薬、ロイコトリエン拮抗薬の連用を併用。Th2サイトカイン阻害薬の併用を考慮。発作治療薬:短時間作用性気管支拡張薬(1日3~4回まで)。
ステップ4
喘息の長期管理における段階的薬剤投与法において、ステップ4は重症度の重症持続型に対応した薬物治療である。長期管理薬:高用量の吸入ステロイドの連用にテオフィリン徐放薬、長時間作用性の貼付/ 経口/吸入β2刺激薬、ロイコトリエン拮抗薬の連用を併用。Th2サイトカイン阻害薬の併用を考慮。上記治療でコントロール不良の場合は、経口ステロイド薬を追加。
ステップアップ
現行の治療でコントロールできないときは、重症度の高いステップに進むことをいう。
ピークフロー値が60%以下のときは、経口ステロイド薬の中・大量短期間投与を行う。
ステップダウン
治療の目的が達成されたら、少なくとも3ヶ月以上の安定を確認してから治療内容を減らしてもよい(治療ステップを下げる)。以後もコントロール維持に必要治療は続ける。
ステロイド依存
通常の喘息治療薬では改善されず、副腎皮質ステロイド薬を用いなければ日常生活ができない重症・通年性の気管支喘息で、しかも1年以上ステロイド療法(プレドニン換算5mg/ 以上)を続けている場合をいう。ステロイド薬と長期間使用した患者のなかにはステロイド薬の減量・中止が困難な患者がおり、難治性喘息といわれる。
ステロイド薬
副腎皮質ステロイド薬は、喘息のもっとも効果的な抗炎症薬である。喘息の病態は慢性の剥離性好酸球性気管支炎であるが、その炎症はステロイド薬により回復する。その作用機序は炎症細胞の気道内浸潤・遊走・活性化の抑制、血管透過性亢進の抑制、気道分泌の抑制、気道過敏性の促進、サイトカイン産生予防、アラキドン酸からのロイコトリエン産生抑制、吸入β2刺激薬の作用促進などがある。経口ステロイド薬は強い効果がある反面、長期使用により消化性潰瘍、糖尿病、骨粗しょう症、易感染など全身性副作用があるので、吸入ステロイドが喘息治療の中心になっている。
ストレス
外部からの刺激(ストレッサー)によって引き起こされる生体の反応をストレスというが、刺激自体もストレスとよばれている。ストレス(ストレッサー)には、物理的・化学的ストレッサー、生理的ストレッサー、心理・社会的ストレッサーの3種類がある。
喘息に関係したストレスは、温度、大気汚染、過労、感染症、葛藤、不安、緊張などが誘引となっている。 (1)物理・化学的ストレッサー: 異常温度、湿度、騒音、けが、有害物質、薬物、大気汚染
(2)生理的ストレッサー: 過労、睡眠不足、栄養不良、感染症
(3)心理・生理的ストレッサー: 人間関係の葛藤、欲求不満、不安、心配、緊張、 怒り、恐怖、失望など
スパイロメトリー
肺機能検査のうち、肺活量や最大努力による呼出時の1秒量、最大呼気流量(ピークフ
ろー)など一連の検査をいう。この結果によって換気障害の種類、程度を判別することができる。これらの測定器がスパイロメーターである。
スパイログラ
スパイロメーターによって呼気量、速度、時間の関係をグラフに画かせたのをスパイログラムという。
スペーサ
吸入ステロイドや吸入β2刺激薬が確実に気管支と肺内に吸入されるための吸入補助器具である。スペーサーの袋部分に吸入薬を噴霧して一定濃度になった空気を深呼吸とともに吸い込む。これにより咽頭への刺激、嗄声、口腔・咽頭カンジダ症などの局所副作用を抑えることができる。また、薬物の噴霧と吸い込みを同調でき、治療効果を高められる。
成人喘息
年齢が20歳以上の喘息患者を成人喘息という。小児喘息患者のほとんどは幼児から学童期に始まり、男児に多く、原因アレルゲンに対する特異的IgE抗体が証明されるアトピー型喘息であるが、成人喘息の場合は中高年で発症し、特異的IgE抗体が証明されない非アトピー型が多く、鎮痛薬喘息もみられる。
喘鳴
喘鳴は気道閉塞の特徴であり、呼吸時にヒューヒュー、ゼーゼーと音を伴うもので、気管支喘息ではよくみられる。
咳喘息
喘鳴や呼吸困難発作を伴わない慢性乾性咳嗽を唯一の症状とし、気管支拡張薬が有効である病態。咳喘息は喘息の亜型あるいは前段階と考えられる。就寝時から早朝時の乾性咳嗽、気道過敏性の軽度亢進、喀痰中好酸球増多、ステロイド薬が有効という特徴がある。治療は、気管支拡張薬と吸入ステロイドによる長期管理が必要である。
接着因子
アレルギーの炎症反応の場においては、リンパ球、マクロファージ、肥満細胞、好酸球などの炎症細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞などの細胞が互いに情報交換しつつ、反応を進行、完成させ、消退させている。この情報交換の際に重要な役割をするのが、細胞同士を互いに密接に接触させる機能を持つ接着因子の仲間である。接着因子には4つのグループ、免疫グロブリンファミリー、インテグリンファミリー、セクレチンファミリー、カドヘリンファミリーがある。
接触性皮膚炎
外来性の物質との接触により生ずる皮膚炎をいう。接触部位の痒み、赤斑、浮腫、丘疹、びらん、小水疱などが見られる。発症機序により刺激性、アレルギー性、光毒性に分かれる。アレルギーは主に遅発型アレルギーが関与し、その原因物質は、金属(ニッケル、コバルト、クロムなど)、植物(うるしなど)、日用品(ゴム、ラテックスなど)、化粧品、医薬品(軟膏基材など)がある。パッチテストにより原因物質を同定する。
線維芽細胞
慢性喘息の気管支壁は、粘膜の繊毛上皮細胞の内側、基底膜の間にⅢ型、Ⅳ型コラーゲンとフィブロネクチンなどの線維からなる厚い結合組織の層が沈着して肥厚している
(上皮下線維増生)。線維芽細胞はこれらの線維性物質を産生する。これに上皮化成(杯細胞化)、平滑筋肥厚、粘膜下腺の増殖が加わった病態を気道壁のリモデリングという。