・シンポジウム9
食物アレルギーの現状と対策
座長:池澤善郎1),宇理須厚雄2)(1)横浜市立大学大学院医学研究科環境免疫病態皮膚科学,2)藤田保健衛生大学坂文種報徳会病院小児科)
3.食物アレルギーの新しい治療の試み
宇理須厚雄1),平田典子1),松山温子1),各務美智子1),徳田玲子1),中島陽一2),河村牧子2),近藤康人2),柘植郁哉2),山田一惠3),木村 守4)
藤田保健衛生大学 坂文種報徳會病院 小児科1) 藤田保健衛生大学2) 山田医院3) キユーピー株式会社4)
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食物アレルギーの治療には,原因食物によって惹起された過敏症状を改善する治療と,過敏症状が惹起されないように予防することを目的とした治療とがある.
予防療法として現在行われている治療法には原因食品の除去とその低アレルゲン化食品などの代替食品の利用がある.
最近,低アレルゲン化などの修飾を加えない食物そのものを用いた免疫療法が食物アレルギー患者で試みられている.
投与ルートには経口法と注射法が報告されているが,いずれも治療中に軽症から重症の過敏症状が惹起され中断する症例が存在するために一般的にはなっていない.
研究段階の試みとして,安全性を高めた修飾抗原を用いた免疫療法がヒトならびに食物アレルギーの動物モデルで実施され報告されている.
筆者らは,鶏卵アレルギー患児を対象に,低アレルゲン化された加熱脱オボムコイド卵白を添加したクッキー2枚(2枚中に鶏卵1個相当含有)を1ヵ月間経口摂取することによって経口免疫療法を試みている.
約50%の鶏卵アレルギー患者で経口負荷試験の陰性化を確認している.
さらには,ピーナッツアレルギー患者に対するヒト型抗IgE抗体(TNX-901)による抗体療法,ピーナッツアレルギーのマウスに対するリポゾームに封じ込めたリコンビナントIL-12の経口投与によるサイトカイン療法やピーナッツアレルギーマウスモデルに対してキトサンとピーナッツの主要アレルゲンであるAra h 2をコードする遺伝子を組み込んだベクターとで構成される超微粒子を経口投与することによる遺伝子治療も報告されている.
これらも広義の予防療法といえる.本口演では,予防療法に焦点を絞り,現在試みられている食物アレルギーの新しい治療法を概説する.
第17回日本アレルギー学会春季臨床大会 2005年6月開催