・公的避難を言いにくく
一方で土地柄なのか、住民の間にも公的避難措置を主張するのを憚る空気があるのです。
「3・11」からまもない時期に福島県に来た「被曝医療の権威」とかいう先生から、講演会などで安全説を振り撤かれています。
避難したくても、それを実行したり、その意思を表明することすらも人々がためらう裏には、この先生の影響もあったと感じられます。
だが、汚染の深刻さがわかってきて、やっと最近は渡利地区辺りでも比較的自由に物が言えるようになってきたようです。
それにしても不思議なのは、一般人の年間被曝限度値として年間積算20ミリシーベルトが今なお生きていて、それを踏まえて国、県、市の被曝対策が進められていることです。
平常時の被曝線量は年1ミリシーベルト以下に抑えるべきだが、緊急時は年に20~100ミリシーベルトでもやむをえず、復旧期は年1~20ミリシーベルトを超えないようにする、との勧告を2007年に出した国際放射線防護委員会(ICRP)が、「3・11」後に日本に「緊急時」の採用を提議したことが影響しているようですが、このICRP提議を踏まえるというなら、今は復旧期の「年1~20ミリシーベルト」を採用し、極力年1ミリシーベルト以下をめざすべきなのに、そうした対処が政府内でなされていない。
人々の生命、健康から物事を考えない。
この大問題の実質的責任部署がどこで、責任者は誰かもはっきり見えてこない。
残念ながらやはり日本は文明国ではないと思います。
ライター 長谷川煕