・シンポジウム6
薬物アレルギーの診断と治療の進歩
司会者:池澤善郎1), 眞弓光文2)(横浜市立大学大学院医学研究科環境免疫病態皮膚科学1), 福井大学医学部病態制御医学講座小児科学2))
S6-3.小児の重症薬疹の診断と治療
相原雄幸
横浜市立大学附属市民総合医療センター小児総合医療センター
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はじめに中毒性表皮壊死症(Toxic epidermal necrolysis,TEN),Stevens-Johnson症候群(Stevens-Johnson syndrome,SJS)などの重症薬疹についてはその発症機序の詳細はかならずしも明らかではなく,死亡例や重度の後遺症など解決すべき課題も少なくない.
これらの疾患は小児の報告例が少ない印象がある.
また,近年注目されているHHV-6の再活性化が関与する薬剤性過敏症症候群(Drug-induced hypersensitivity syndrome,DIHS)についても同様である.
しかしながら,これらの重症薬疹の小児における疫学調査は実施されておらず,その実態は明らかではない.
一方で,小児ではM.pneumoniaeなどの感染に合併してSJSを発症することも知られている.
ここでは,自験例を提示すると同時に最新の厚労省研究班(橋本班)の診断基準ならびに治療指針についても紹介する.
前記診断基準にもとづいて診断する.
皮膚生検は必須である.
重症薬疹の治療の基本は,まず被疑薬剤を早期に中止し,早期に大量の副腎ステロイド薬を投与することである.
さらに重症のTEN/SJSではγ―グロブリン投与や血漿交換療法なども選択肢の一つである.
皮膚びらん面については熱傷に準じた治療をする.さらに,早期から粘膜保護を実施する.
特に眼に対するステロイド薬点眼を早期から十分な期間使用することと偽膜剥離が失明などの後遺症の低減に重要である.
また,多くの症例では基礎疾患を有する場合も少なくなくその治療についても並行して進める.
被疑薬剤の確定は必須であり,DLSTやパッチテストを実施するが,その陽性率は必ずしも高いとは言えない.
さらに,感染症はM.pneumoniaeやHHV-6を始めとしたヘルペスウイルスを中心にその合併あるいは再活性化を明らかにする.
また,発症の関連性が疑われている遺伝子の解析などにも積極的に貢献する.
最後に重症薬疹では,全身多臓器が障害されるため,ICUや熱傷センターでの治療が望ましい.
その治療には小児科だけではなく,皮膚科や麻酔科,眼科など多くの診療科医師の協力のもとに早期から積極的治療を行うことが重要である.
第21回日本アレルギー学会春季臨床大会 2009年6月開催