シックハウス症候群の診断―とくに問診票から | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・シンポジウム7
シックハウス症候群の現状と展望
座長:鳥居新平1),長谷川眞紀2)(1)愛知学泉大学,2)(独)国立病院機構相模原病院アレルギー・呼吸器科)

4.シックハウス症候群の診断―とくに問診票から

水城まさみ
国立病院機構盛岡病院 臨床研究部(呼吸器・アレルギー科)


--------------------------------------------------------------------------------
 昨年,シックハウス症候群が正式な保険病名となったが,専門家の間では化学物質過敏症という用語を用いることが多いように思われる.

本シンポジウムではシックハウス症候群を使用しているが,本稿では新築家屋入居やリフォームをきっかけにして,症状が起こるようになり,その場を離れると症状が軽快する病態を特長とするものとし,その中には次第に種々の化学物質に反応して多臓器の症状を呈するようになり,日常生活にも支障が起きてくるいわゆる多種化学物質過敏症(Multiple Chemical Sensitivity;MCS)の状態も含むものとする.

MCSは石川らの診断基準や化学物質負荷試験などで診断されるが,化学物質負荷ブースを持たない施設で診断するのは困難である.

演者は平成14年12月より一般病院で化学物質過敏症外来を開設しているが,診断にあたり初診時にMillerらがMCSの診断,スクリーニングに役立つ問診票として世界共通に使用できるように開発したQEESI(Quick Environmental Exposure and Sensitivity Inventory)を活用してきた.QEESIは化学物質不耐性,症状,日常生活への障害度,マスキングについての質問項目に回答してもらい,その中で化学物質不耐性,症状,マスキングの各スコアの組み合わせによる診断基準に従ってMCSの可能性を予測するものである.

化学物質過敏症外来受診のきっかけとなった何らかのエピソードを有する患者40名(男6名,女34名)についてQEEISIの診断基準で分類してみるとMCS患者の確率が非常に高い18名,可能性が高い3名,疑いがある3名で,疑いがある以上が合わせて24名(60%),MCS患者でない可能性が高いが16名(40%)であった.

MCSの診断基準分類に関わらず,すべての患者を対象にして,初診時の症状や環境についての詳細な問診項目および症状経過とQEESIの各項目との関連について検討を加え,以下に示すいくつかの興味ある知見が得られた.

(1)QEESIは比較的高い濃度の化学物質に暴露されて発症する狭義のシックハウス症候群とMCSとの鑑別に有用である.

(2)QEESIは,症状経過,治療効果判定に際して客観的指標となり得る.

(3)QEESIは化学物質不耐性と症状との関連性を検証することが可能であり,MCSの発症機序を解明していく一助になり得る.

今後,QEESIの問診票としての客観性を検証していくために,化学物質負荷試験や眼科的検査との相関についても検討していく必要がある.

第17回日本アレルギー学会春季臨床大会 2005年6月開催