・シンポジウム8
化学物質過敏症の診断・治療と問題点
座長:坂部 貢1),山川有子2)(1)北里研究所病院臨床環境医学センター,2)横浜栄共済病院皮膚科)
1.化学物質過敏症の診断・治療と問題点 ―皮膚科の見地から
大砂博之
ひろクリニック,横浜市立大学環境免疫病態皮膚科学
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演者自身が,化学物質過敏症であり,消毒,ワックス等に反応するため,大学を辞して開業し,北里研究所病院の診察も受けた.
研修医の頃から興味を持っていたが,近年診察をすることもあり,また,自身の事も併せて,化学物質過敏症の診断・治療と問題点について,皮膚科の立場から述べてみたい.
化学物質過敏症の皮膚症状としては,皮膚掻痒,刺激感,湿疹,蕁麻疹,アトピー性皮膚炎などの既存の皮疹の悪化が多いと思われる.
また,薬物アレルギーや食物アレルギーが疑われて受診し,化学物質過敏症の合併に気づくこともある.
アトピー性皮膚炎で顔面病変の強い例は,一時よりも減った印象があるが,その一因として,室内の化学物質濃度が軽快したためではないかという話があり,筆者も印象的には納得の出来る説ではある.
ただし,このことを自覚する患者と,疑う医師がどれだけおり,検査・治療をどの様に行うかには困難が生じる.
横浜市立大学皮膚科はアレルギー疾患を多く診ていることもあるためか,主訴として直接受診をすることもある.
また,アレルギー科皮膚科で開業をしているが,アレルギー科ということで,化学物質過敏症(シックハウス症候群)を疑って受診されるかたもいる.
幸運なことに,北里研究所病院,東京労災病院,国立相模原病院とも,受診できる距離であるため,1回は精査をお願いすることにしている.
基本的には,問診と臨床的な負荷試験で,診断は可能と思われるが,客観的な検査,法的な問題が生じる場合等を考えると連携が必要であろうと思われる.
大学での患者の中で,食物アレルギー,アスピリン不耐症を疑い入院精査とし,化学物質過敏症を合併していることが判明した症例を提示し,その際に問題となった点を挙げてみたい.
最後に,クリニック開設にあたりどの様な対処を行ったかを挙げ,化学物質過敏症の患者はアレルギー科を受診する可能性が高いので,入門の一助となればと考えている.
第16回日本アレルギー学会春季臨床大会 2004年5月開催