・② ナノマテリアルの安全性に関する試験・研究の推進
厚生労働省においては、現在、厚生労働科学研究費補助金化学物質リスク研究事業により、代表的なナノマテリアルについて、ナノマテリアルの安全性確認における健康影響評価手法の確立やナノマテリアルの経皮毒性評価手法の開発、ナノマテリアルの体内動態可視化手法の開発等を推進し
てきている。
また、経済協力開発機構(OECD)においても、ナノマテリアルの安全性に関する試験・研究が推進されている。
平成18 年10 月に第1 回OECD 工業ナノ材料部会が開催され、OECD 加盟国が国際的に協調して、ナノマテリアルについての情報収集等を実施することが合意されており、平成19 年11 月には、OECD スポンサーシッププログラムが発足し、フラーレンや単層・多層カーボンナノチューブなど14 種類の代表的ナノマテリアルについて、生体への影響等に関する評価文書が策定されることとなった。
厚生労働省は、関係省庁とも連携しながら、OECD の取組に積極的に協力している。
今後も、OECD 等における国際的な取組状況を踏まえつつ、国内の研究機関とも協力しながら、
・ナノマテリアルの生体へのばく露法やばく露評価法といったばく露に関する研究及びその手法の開発
・生体試料中での分析法や体内分布測定法といった体内動態に関する研究及びその手法の開発、
・ナノマテリアルの毒性やその種差に関する研究及びその試験方法の開発
・ナノマテリアルのin vitro 試験法の開発 等を引き続き推進し、開発された手法や試験法に従い試験を実施していくべきである。
なお、対象となるばく露経路としては、経皮、吸入、経口及び目に対するばく露等の様々なばく露経路が考えられるが、特に経皮、吸入及び経口ばく露が重要である。
また、ナノマテリアルの試験・研究に当たっては、ナノマテリアルの凝集や分散を考慮する必要がある。
他方で、ナノマテリアルが人の健康に与える影響について、何らかの研究の結果が出された場合には、その影響がナノ化したための影響であるのか、化学物質が本来持つ影響であるのか分析する必要がある。
また、過去に実施された研究のうち、相反する結果が出たものについて、相反する結果となった理由を解析する必要がある。
また、これに関連して、ナノマテリアルの試験法の確立にはある程度の期間を要すると予想されるので、ナノマテリアルの国内製造量と何らかの疾病との関連について、疫学的な調査を並行して行うことも検討すべきではないかとの指摘の一方で、疫学的な調査には非常に時間がかかるという懸念もある。
③ 関係府省庁等との連携
関係府省との連携については、総合科学技術会議の下に設置された「ナノテクノロジーの研究開発推進と社会受容に関する基盤研究」等の科学技術連携施策群としての取組等により、内閣府を中心として各省間で情報の交換・共有等を行っているが、今後とも、ナノマテリアルの安全対策について隙間ができないよう、関係する府省、関係機関等との連携により、ナノマテリアルに関する試験・研究の推進、関係情報の共有等に努めていく必要がある。
④ 国際機関等との協力
厚生労働省は、関係省庁とも連携しながら、上述のスポンサーシッププログラム等のOECD の取組に積極的に協力している。
また、FDA 等の海外機関とも情報交換を行っており、今後もこれらの国際的な取組を継続・強化すべきである。