5.安全対策に係る課題と今後の方向
(1)安全対策に係る課題
一部のナノマテリアルについては、一般消費者向けの製品への利用が拡大しており、今後もナノマテリアルを使った新たな製品が開発されることにより、ナノマテリアルがさまざまな用途に用いられることが予想される。
他方で、ナノマテリアルの安全性に関しては、現在まで人の健康に影響を及ぼすという報告はない。
また、動物実験データも少なく、人の健康への影響を予測するために必要十分なデータが得られた状況にはない。
しかしながら、粒子(分子)のサイズが小さくなること等により、ナノマテリアルが一般の化学物質とは異なる有害性を有することが示唆されている。
したがって、ナノマテリアルに関するリスク管理の観点から、ナノマテリアルの使用の実態に関する情報や生体への影響などに関する情報を収集しつつ、簡便な手法も含めて生体影響や物性に関する試験方法等の開発を推進し、開発された試験方法に基づきin vivo 試験、in vitro 試験等を実施していく必要がある。
また、ナノマテリアルに関する国、事業者及び消費者の間での情報交換の充実も課題の一つとして考えられる。
(2)安全対策の方向
ナノマテリアルの開発状況や使用実態などを注視し、ナノマテリアルの人の健康への影響に関する情報等の収集に努め、収集された情報を消費者へ積極的に提供しつつ、国民の健康を確保する観点からどのような対策が必要なのか引き続き検討すべきである。
また、ナノマテリアルに関する技術は、現在も技術的に発展途上にある最先端の技術であり、製造者責任の観点から事業者が開発の段階から主体的に安全対策を進めるべきであるが、国も事業者と協力してナノマテリアルの安全対策に積極的に取り組むべきである。