・3)対応
① 医学的対応
Ⅰ 初診時の対応
シックハウス症候群(SHS)の症状は多彩で多臓器にわたるため鑑別診断が重要となる。
内科学的な臨床を習得した医師にとって、本症の鑑別診断はさほど困難ではないが、症状に応じて、循環器科、呼吸器科、アレルギー科、内分泌・代謝内科、心療内科、耳鼻科、眼科への紹介を考慮する。
すなわち、既存の疾患では説明できない患者の場合、本症を疑うと言う側面もあり、除外診断を旨とすべきである。
そして、本症の診断と対応において、問診は極めて重要であり、30~60分程度の時間をかける必要がある。
時間をかけて、丁寧に患者の訴えを聴取することが、正しい診断の前提であるのみならず、患者との信頼関係を築き、治療の第一歩となるからである。
また、医療施設は一般の家屋に比べて化学物質は多いと考えられ、待ち時間や診療に要す時間に耐えられない患者もいる。
本症の受診は予約制とし、極力、化学物質の少ない環境下で、診療できるようにすることが望ましい。
1.家族歴
SHSには何らかの素因が関与する可能性は否定できないので、家族歴についても問診しておく。
また、SHSの診断では、同居家族の症状の有無が中毒との鑑別において重要である。
2.既往歴
他疾患との鑑別を念頭に、既往歴を聴取する。
また、SHSの発症以前に(多くは数年以上前)、何らかの症状を認めていることが少なくない。
なお、本症はアレルギー疾患、特にアレルギー性鼻炎の合併が高率である。
3.現病歴
発症時は患者自身、本症とは気付いていない場合が多く、前医にうつ病、パニック障害、更年期障害などと診断されていることもある。
本症の症状をよく認識し、発症パターンとその後の経過を理解して病歴を聴取することが重要である。