・2.広場恐怖
広場恐怖とは、パニック発作やそれに類する症状が起こった場合に、誰にも助けてもらえなかったり恥ずかしい思いをしそうな状況を避ける症状のことであり、パニック障害に伴う場合と伴わない場合がある。
典型的には、「あの場所に行くとまた発作が起こりそうだから、行くことができない」といった症状になる。
ここでは、どんな場所でどんな症状が出ることが怖いのかを確認していくことが重要であるが、ある特定の場所で化学物質のために具合悪くなることが極度に怖くてそこに近づくことさえ出来ないという場合には、この診断を付ける必要がある場合もある。
3.特定の恐怖症
特定の対象物や場所自体に対する恐怖を感じる病態であり、高所恐怖症、ヘビ恐怖症、雷恐怖症などがその例である。
ある化学物質やそれがある場所自体が極度に怖いといった場合には、広場恐怖ではなく、この診断を付ける必要がある場合もある。
Ⅴ 精神病性障害
1.統合失調症
生活全般にわたって、妄想、幻覚が認められる場合は統合失調症の診断を疑う必要がある。
SHSやその原因になる化学物質に関してのみならず、関連した様々な出来事に関して、一貫性のない現実とは明らかに違うと思われる話が聞かれるような場合である。
成人の有病率は1%程度と低くはないので、注意が必要である。
2.妄想性障害
妄想性障害では、奇異でない、現実生活の限られた状況に関する妄想が1ヶ月以上続くことで診断されるために、統合失調症よりも鑑別は難しくなる。
しかし、この場合も、注意深く話を聞くことで、現実との食い違いが明らかになることが多い。
妄想の内容が、自分が何らかの方法で悪意を持って扱われている(例えば、隣家が農薬を撒いて嫌がらせをしている)といった被害型の場合は、比較的容易に診断を疑うことはできるが、精神科への紹介も含めてその後の治療には難渋することも多い。
Ⅵ まとめ
大うつ病、パニック障害、統合失調症、妄想性障害などを疑った場合は、専門に診る科が違う可能性が高いことを、患者に分かりやすく説明した上で、精神科や心療内科を紹介するのがよい。
ただし、妄想性障害や統合失調症などでは、なかなか受診につなげるのが難しいことも多いと思われるため、予めリエゾン(治療チーム)のような形で精神科医にコンサルとしやすい形を作っておく方が望ましい。