・リスク評価
ナノ技術を医薬品、電子機器、航空機、車などの車両に使用することは、SFのようであり、信じがたいとさえ感じられることがしばしばある。
自然発生したナノ粒子―完全に無害である―は、数多くの食品や香辛料、さらにチョコレートやビール、乳製品の中にも存在している。
毒物学者などのリスク評価者が懸念しているのは、もし重大な危険性が存在する場合があるのであれば、原子サイズ以下の化学構造が分子を構成単位として商品価値のある人工・加工ナノ構造になった場合にもこうした危険性が存在する恐れがあるということである。
米安全当局―FDA、USDA、環境保護庁(EPA)、疾病管理予防センター(CDC)、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)など―は、産業界に悩まされている。
産業界は、いくつかの化学物質―銀、二酸化チタン、銅―がほぼ安全に何十年もの間使用されていることから、ナノ粒子も安全なものとして即刻認めるよう要求しているのだ。
しかし、健康・安全規制当局は、ナノスケールになったこうした金属や化学物質を吸入または摂取した場合は特に、完全に安全であるかどうか依然として疑いを持っている。
専門家によって検証された重要な研究は政府調査官によるものであっても大学研究者によるものであっても、ナノ粒子について、その多くは非常に小さいために皮膚や肺そして極めて重要な血液脳関門までも通過するということを示している。
カーボン・ナノチューブ―数多くのナノ製品及び包装の主要な構成要素の1つ―を吸入することによって、アスベストの場合と同じくがんが発症するということが証明されている。
しかしナノ粒子は、アスベストよりも完全に肺を通過することが可能であるため、実験動物に対しより急速に致命的なダメージを与えることが多いようだ。
ナノ二酸化チタンは白色剤として数多くの食品や化粧品に使用されているが、大量のナノ二酸化チタンに曝露した実験動物は病気を発症するということが証明されている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校での研究では、こうした実験動物のDNAと染色体の損傷または破壊が繰り返し示された。
食品技術者協会のポスター・セッション期間中に研究発表した新卒者や若手科学者の数から判断すると、ナノ物質の使用が食品科学の世界において重要な役割を担うことになるということは明らかである。