・出典:食品・薬品安全性研究ニュース
http://www.jpha.or.jp/jpha/jphanews/anzensei.html
「ディーゼル排気粒子による気道過敏症」
喘息は大気中あるいは内因性の様々な刺激物質に対する気道の過敏症で,気道の過敏状態は,最近では大気汚染物質,一酸化窒素やオゾンが誘発すると思われているが,特にディーゼル排ガス中の微粒子(DEP)はアレルギー性呼吸器疾患の増加の原因と考えられてきた.DEP は IgE 産生の増強(アジュバンド)効果を有するが,それは一部 IL-4 産生を促進すること,また, B 細胞に直接作用することによって起こる.
さらに,DEP は気管上皮細胞を刺激して炎症前駆サイトカインである GM-CFS(顆粒球マクロファージ誘導因子),IL-6, IL-8 および TNF-α の産生を増強すると考えられている.
本研究は気道過敏反応の発生機序を明らかにするために,またその関連で GM-CSF の役割について検討するために, マウス鼻腔内に DEP を投与した場合の気道応答性の変化について実験した.
実験には気管収縮物質であるアセチルコリン(Ach)に対して反応性が高い A/J マウスと反応性が低い C57BL/6 マウスを用い,それぞれ DEP 0.1 ?(生理食塩液に懸濁)を連日2週間鼻腔内投与し,その後に Ach 吸入による気道抵抗の変化を測定した.
A/J マウスでは C57BL/6 マウスと比較して Ach による気道抵抗の増加は大きく,DEP 投与群では非投与群と比較して気道抵抗の増加はより顕著であった.
この Ach による気道抵抗の増加は M3 ムスカリン受容体拮抗薬である 4-DAMP で消失した.
組織学的に調べると, DEP 非投与動物では気道表面が線毛細胞で覆われているのに対し,DEP 投与動物では粘液分泌性の Clara 細胞に置き代わっていた.
さらに,GM-CSF の抗体を DEP 投与直前に鼻腔内投与した群では,Ach による気道抵抗増強に対する明らかな抑制が認められ,気道表面の組織学的変化も認められなかった.
また,DEP 投与によって肺における GM-CSF のメッセンジャーRNA の発現レベルが増加することが認められた.
これらの結果から DEP は GM-CSF 産生の増加を介して気道過敏症を引き起こすものと考えられた.