【トップインタビュー】ケンコーコムVS厚労省~医薬品ネット販売訴訟のゆくえ(4)
2011年9月22日 14:35
健康食品・医薬品などをインターネット販売しているケンコーコム(株)は、健康関連商品の取扱いを拡大、中国やシンガポールなど海外事業への進出に力を注いでいる。
後藤社長は、ネット通販でおよそ1兆円を超えると想定する健康関連市場のリーディングカンパニーを目指している。
一方、薬事法施行規則等の一部を改正する省令に関して提議した訴訟では、厚生労働省を相手に係争中。
医薬品をネットで販売する権利と、消費者が医薬品をネットで購入する権利を守るために徹底抗戦を貫く構えだ。
(聞き手:ヘルスケア事業部 田代 宏)
<最高裁でも争う(後藤社長)>
――御社ではここ数年、医薬品ネット販売をめぐる動きで注目を集めていますね。
後藤 「一般用医薬品のネット販売を原則禁止する」という内容に薬事法が改正された2009年5月に厚生労働省を相手取り訴訟を提起しました。10年3月に地裁判決で敗訴しましたが、当社はこれを不服として控訴し、その控訴審が今年4月に結審して、夏には判決が出る予定です。震災の影響もあるようで、少し時間がかかっています。その間3月に政府の事業仕分けで、医薬品ネット販売はおかしいのでは、という話も出ました。
――判決の見通しはいかがですか。
後藤 見通しは私たちからはなんとも言えません。ただ、一審の時点で論理破綻していたのに、国が裁判に勝てたこと自体が不思議だと思っています。彼らの主張には、客観的根拠がまったくありません。
――敗訴となったら最高裁まで上告されますか。
後藤 もちろん争います。
――楽天など、他のネット系企業とも連携されているのですか。
後藤 いろいろと応援をいただいていますね。具体的には楽天さんを中心に約150万件の署名を集めていただいたり、eコマース企業の業界団体では医薬品ネット販売の規制に対する反対声明を表明するなどサポートしていただいています。ネット系企業以外でも、民主党内で、一般用医薬品販売の規制緩和を推進する議員連盟が立ち上がっています。今年5月で、離島に住む方や継続購入の方は引き続き、第2類医薬品をネットで購入できるという経過措置の期間が切れる予定だったものの、今後も継続となりました。それは良いのですが、ではなぜ経過措置期間などを置いたのか。そもそもネットでの医薬品販売の規制自体必要ありません。
――後藤社長の主張は全面解禁という姿勢ですか。
後藤 医薬品の販売においての何らかの規制は必要だと思います。今回の裁判では、「ネット販売だから一切禁止」という規制がおかしいと言っているわけです。国は、医薬品販売は薬剤師と購入者が対面でなくてはいけないと主張しています。しかし、薬剤師は医師ではないので診断することはできません。それなのになぜなのかと聞きただしていくと、「相手の目が泳いでいるかどうかを確認して嘘をついているかどうかを確認する」などと、科学的根拠のない答えを平然と述べてくるわけです。このようなことが、ネット販売してはいけないという理由にはなりません。このような問答が一審から続いています。いずれにせよ、ネット販売だと、情報提供の難易さや実現可能性に有意な差があると判断している点が納得できません。ですから、ネットでの医薬品販売では安全性を担保する対策など一定の規制が有れば良いと思っています。ネット販売だから一切合財認めないというのではなく、ルール作りが必要ですね。
<店舗とは手を取り合っていきたい>
――健康食品の販売も国が明確なガイドラインを作っていませんよね。
後藤 ただ、健康食品は医薬品と違い、全面的にネット販売を禁止にはしていません。医薬品の場合、ネット販売というだけで「危険だから販売してはいけません」という国の方針に問題があります。ネットであろうが、店舗での対面であろうが、お客様に安全に商品をお届けするためのルール作りについて議論すべきです。
――今回の判決については、自社ホームページで「ネットでペテン師が嘘つきに医薬品を販売するという想定に立っている判決」とコメントされていました。この「嘘つき」は消費者を指すのでしょうか。
後藤 国の言い分ではそういうことになりますよね。判決では、たとえば「薬中毒の消費者が、麻薬成分が含まれている咳止めの薬を嘘をついて大量に買って摂取しようとする。、それに対し、対面販売ならばそれを見破り、薬中毒の人を守れる」というわけです。そんなことは絶対ありえないことです。
――これだけネット販売をめぐる争いの背景とは何でしょうか。
後藤 「医薬品のネット販売を禁止する」という国に対して、それはおかしいと訴えていますが、だからといって、われわれのようなネット販売企業は、チェーンドラッグストアなどの店舗系企業と争いたいというわけではありません。双方それぞれの販売の仕組みには一長一短があります。大切なことは、医薬品を必要としているどのようなお客様に対しても、安全に、安心して、それぞれの状況に応じて便利な形でお届けできる環境を整えていくことです。そのためにも、手を取り合っていきたいと考えています。
――日本チェーンドラッグストア協会などとはうまく連携できないのでしょうか。
後藤 先に述べたように、それぞれの良さを活かして、消費者にとって一番良い環境を作ることが必要だと考えていますので、連携していきたいですね。
(文・構成:小山 仁)
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