・■朝日9月19日 がれきの山発火相次ぐ 微生物の動き活発内部に熱
東日本大震災の被災地のがれき置き場で火災が相次いでいる。
多くが自然発火とみられ、専門家は、分別しないまま高く積み上げることで危険性が高まっていると指摘する。
自治体は、内部の熱を逃すパイプを設けるなどの対策に乗り出した。
「民家は目と鼻の先。燃え移ったらと、住民は怖がっています」。
宮城県気仙沼市の消防団員、小松昇さん(35)は話す。
8月28日、同市内の置き揚で火災が起きた。
民家は約100メートル先。タイヤや家電、木材などが交じった高さ7メートルのがれきから炎が上がり、消防車28台が出動。鎮火まで10時間かかった。
気仙沼・本吉消防本部は高く積み上げられ、どこから発火したのか分からなかった」。
市は翌日から、警備会社に頼んで夜の見回りを強化した。担当者は「津波を逃れた家に燃え移ったら申し訳なくていたたまれない。
できることはすべてやる」と必死だ。
各地の消防によると、火災は17日現在、宮城県で13件発生。
16日には名取市閑上の置き場で火が出た。
さらに、白煙が岩手県で2件、蒸気の噴出も宮城県で13件、岩手県で11件確認された。
「消防を呼ばずに自分たちで消し止めたことは何度もあった」と、置き場の管理業者は話す。
産業技術総合研究所の若倉正英研究顧問によると、微生物の動きが活発になったり、金属と水が反応したりして熱がたまるのが、そもそもの原因という。
阪神大震災でも、がれき置き場での火災はあった。
ただ、消防大学校消防研究センターの古積博フェローは、微生物を多く含むヘドロや重油まみれの木材が交じる津波被災地のがれきの方が危険性が高いと見る。
「ここは52度。要注意だね」。
対策が進む宮城県東松島市では、がれき置き揚に10~20メートルごとにパイプを突き立てて熱を逃がしている。
管理業者はパイプに温度計をかざし、内部の温度を推測。
雨水がたまるのを防ごうと地面に傾斜をつけて水はけを良くし、分別も19種類と細かく分けた。
だが、大量のがれきを前に、多くの自治体では対応が追いつかない。
8月に約4500トンが焼ける火災があった宮城県石巻市の担当者は「震災当初は何でも積み上げるしかなかった。今も分別する余力はない」と嘆く。
国立環境研究所の大迫政浩・資源循環廃棄物研究センター長は、時間が経つほど微生物が増えて活動が活発になるとみて、「気温が多少下がっても危険は減らない」と指摘。
「火災予防の観点からも、がれきの処理を急ぐ必要がある」と話す。(木下こゆる、力丸祥子)
被災地のがれき
環境省によると、被災地の沿岸部で生じたがれきは推計で岩手県476万トン、宮城県1569万トン、福島県228万トン。
置き場に搬入できたのは岩手県73%、宮城県51%、福島県44%。宮城県は1年以内に1次置き場、3年以内に2次置き場に移して処理する方針だ。