・「出典」西日本新聞
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/lifestyle/shoku/rensai/
・食卓の向こう側・第2部 「命」つなぐために<1>もどき 安さの裏にあるものは
金太郎あめのゆで卵版「ロングエッグ」 多様な食べ物があふれる中、私たちはどのような基準で選んでいるのでしょう。
企画「食卓の向こう側 第二部」では、知ってそうで知らない「食」、そして体との関係、暮らしのありように迫ります。
・コロッケ一個二十円。
「なんでこんな値段でできると?」。
福岡市内のスーパーの総菜コーナーで、主婦の副島智美(43)は驚きの声を上げた。
副島はパートで、きんぴらごぼうなど家庭料理を提供する総菜店で働く。
そこで作るコロッケはジャガイモをゆで、いためたタマネギ、ひき肉などを入れる手作り。
一個百三十円。
材料費や自分の時給を計算すると、ぎりぎりの値段だ。
「外国で作るから安いのか。どうやったら、この価格になるんだろ」。疑問が膨らむ。
「要望に合わせ、それなりの商品をつくる。それがプロの技」。
かつて食品添加物を扱う商社のトップセールスマンとして、さまざまな食品の開発に携わった安部司(52)=北九州市=は言う。
安部が明かすテクニック。
あるスーパーから特売用の肉団子(いわゆるミートボール)を頼まれたケースでは…。
普通のミンチは使えないから、牛の骨部分についている肉を削り取った端肉(はにく)をもとに、大豆たんぱく(人造肉)で増量し、欠ける風味は香料(フレーバー)で補う。
次に歯触りを滑らかにする加工でんぷんや油を加えるが、それと引き換えに失う粘りは結着剤でカバー。
油をなじませる乳化剤、色あせを防ぐ酸化防止剤、さらに着色料、保存料、肉エキス、うま味調味料…。
肉団子にからめるソースは氷酢酸やグルタミン酸ソーダなどで、ケチャップはトマトペーストや酸味料などでこしらえ、真空パックで加熱殺菌。
二十種以上の添加物を使い、子どもが喜ぶ味(軟らかくて味が濃く、三口でのみ込める)で、常温保存が利く商品に仕上げる。