日本においても、アメリカ合衆国、欧州、世界保健機関(WHO)と同じく、チメロサール ( thimerosal ) をワクチンにできるだけ添加しない方向にあります。
ワクチン中のチメロサール ( thimerosal ) の減量や無添加が見られています。
米国の医学協議会(IOM)の結論(2004年)
米国科学アカデミーの医学協議会( Institution Of Medicine : IOM )は、予防接種安全性検討委員会で、2001年の勧告以来、「チメロサールを含むワクチンと自閉症と」について検討し、おおよそ、次のような結論を2004年5月に示しました。
チメロサールを含むワクチンの接種を受けることと自閉症との間の因果関係については、否認することが根拠によって支持される。
メチル水銀と魚
以上で、「チメロサールとワクチン」についての話題は終えます。引き続き、関連事項として、「メチル水銀と魚」について話題とします。
水銀の化合物のうち、炭素原子を含むものを有機水銀と言います。有機水銀としては、主なものは、メチル水銀・エチル水銀・フェニル水銀の三つです。チメロサール ( thimerosal ) のエチル水銀については、メチル水銀に毒性が近いのではと心配されているわけですが、水俣病で有名なメチル水銀も含めた有機水銀に注意する必要があります。
有機水銀は、食物として摂取した場合、消化管から90-100%吸収されます。有機水銀は、血液に乗って全身を巡り、胎盤を通過して胎児に到達できます。また、脳・血液関門(脳細胞を守るために血液中の物質が血管から脳細胞まで到達するのを阻止する構造)を通過して脳細胞まで到達できます。
発育中の脳に対してメチル水銀は毒性があります。
水俣病などの場合で、摂取した母親は無症状や弱い症状なのに、胎児の段階から影響を受け、生まれたこどもに強い症状が出た例が知られています。
生まれたときには正常に見えても、発達の遅れや目の不自由、耳の不自由、痙攣などが明らかになっていくことがあります。
環境中の水銀については、水中で細菌の働きでメチル化しメチル水銀となることがあります。
このメチル水銀は、水中の食物連鎖の中で濃縮し、強くて大きくて長生きな魚ほど体内に水銀をため込む傾向にあります。
この魚を食べることで人は有機水銀を摂取することになります。
アメリカ合衆国のCDC(疾病予防センター)の調査によれば、アメリカ合衆国では、血液中の水銀濃度が16-49歳女性で1.2ppb、1-5歳のこどもで0.3ppbと、こどもを産む可能性のある年齢層の女性で比較的高いことが知られています(参考文献11)。
アメリカ合衆国では、2001年3月、FDA ( Food and Drug Administration : 食品医薬品庁 ) が、妊婦および妊娠する可能性のある女性に対して、メチル水銀の濃度が高い魚(サメ、メカジキ、king mackerel, tilefishの4種類 )を食べないように勧めています(参考文献13)。FDA ( Food and Drug Administration : 食品医薬品庁)のデータでは、水銀濃度がサメ0.96ppm、メカジキ1.00ppm、king mackerel 0.73ppm, tilefish 1.45ppm でした。また、メチル水銀は、摂取した母親の母乳中にも出てくるので、授乳期の母親及び乳幼児に対しても、同様に食べないように勧めています。
アメリカ合衆国では、FDA ( Food and Drug Administration : 食品医薬品庁)は、行政としてなんらかの行動を起こす基準としては、魚のメチル水銀の濃度が1ppmを超えたときとされています。
英国では、ブリストル大学の調査によれば、メチル水銀濃度がサメ1.521ppm、メカジキ1.355ppm、marlin1.091ppm でした。