・■朝日6月21日 セメントエ場「がれき任せて」
岩手県の太平洋セメント大船渡工場が22日、東日本大震災で被災した同県大船渡、陸前高田両市のがれきの焼却を始める。
セメント業界が得意とする廃棄物のリサイクルにもつなげる。
塩分除去などの課題を抱えつつも、復旧・復興を阻むがれきの処理に乗り出す。
焼却・再利用へ・敵は塩分
震災で発生したがれきは推定2千万トン超で、このうち岩手県分は583万トン。
両市は、計171万トンを3年ほどかけて処理する。
大船渡工揚も被災し、セメント生産の再開は11月になる。だが、津波を免れた窯を前倒しで使用。
市が5センチ以下に破砕・選別した木材、壁材、土砂など1日約300トンのがれきを焼く。
太平洋セメントの徳植桂治杜長は「我々に出来る支援は腹を決めてがれきを処理すること」。
国の補正予算による費用負担の裏付けを待たず、会杜にとっては利益度外視のスタートだ。岩手県は、両市以外のがれきの処理も同杜に委託したい考え。県の担当者は「11月に工揚が本格的に再開すれは、かなりの量を焼却できる」と期待する。
業界はかねて、積極的に廃棄物を再利用してきた。
2010年度は石炭灰、汚泥、木くずなど約2500万トンを受け入れ、セメントの原料や燃料に使った。
業界が受け入れないと、全国の産業廃棄物の最終処分場の利用可能年数が半分になるとも言われるほどだ。
ただし、課題もある。
がれきの多くは海水につかって塩分を含んでいるうえ、有害なダイオキシンの発生を防ぐには高温で焼く必要がある。
大船渡工揚の藤井茂樹業務部長は「塩分や高温焼却は窯に負担をかける」と説明。
8月末までは試行的に焼き、問題がなければ焼却量を増やす。
焼却にとどまらず、セメント原料としての再利用を目指し、大船渡市は塩分濃度を下げる施設を市内に準傭中だ。藤井部長は「がれきを処分しなければ、街づくりも始まらない。
何とか軌道に乗せ、セメント生産にもつなげたい」と話す。
東北では、三菱マテリアルも青森県東通村、岩手県一関市にセメントエ場を持つ。
とはいえ、がれきの受け入れには分別や塩分の除去が課題になるため、今のところ具体化していない。(土肥修一、志村亮)