・■朝日5月19日 茶のセシウム 基準は 濃度乾燥させれば高く 湯注げば低く
収穫期を迎えた新茶で基準を超える放射性物質が検出され、産地がゆれている。
お茶は多くの野菜類と違い、乾燥させてお湯で抽出する。
どの段階で規制するかが決まらず、消費者の不安は解消されない。
日本一のお茶の産地、静岡県。隣り合う神奈川県南足柄市の生茶葉から基準を超す放射性セシウムが検出され、県は12~16日に15市町で緊急調査した。調査対象にしたのは、生の茶葉とお湯で抽出した飲用茶。
飲用茶は製茶した茶葉10グラム90度のお湯430ミリリットルに60秒浸して抽出した。
生茶葉は厚労省が定めた食品分類「その他」の1キロあたり500ベクレル、飲用茶は「飲料水」の同200ベクレルを基準にした。
すべてが基準を大きく下回り、最も高い静岡市清水区でもセシウムは生茶葉が139ベクレル、飲用茶が11ベクレルだった。
川勝平太知事は18日、「県内のお茶は安全」と童言した。
宣言の2日前の16日、厚労省は荒茶も検査し、500ベクレルを超えるものが流通しないように連絡していた。
荒茶は生茶葉を蒸気で加熱して乾燥させた精製前のもの。
生茶葉から重さが5分の1程度になり、放射性物質もその分、濃縮される。
基準を超すセシウムが検出された南足柄市産の生茶葉を荒茶にしたら3千ベクレルにはねあがった。
だが、静岡県は「荒茶は中間過程で調査する意味がない」との立揚だ。
「生茶葉も荒茶もそのまま流通しない。荒茶の高い数値が独り歩きしてしまうことが恐ろしい」
厚労省の検査方針には産地から異議が相次ぐ。
「狭山茶」がある埼玉県は、知事が17日の会見で「厚労省は飲用茶がどういう状況かを消費者に理解してもらう努力を」と求めた。
生茶葉が基準を超えて出荷自粛になっている神奈川県清川村。
茶農家の山口文男さん(82)は最も稼げる一番茶を機械で「刈り捨て」にした。
6月には2番茶の収穫が始まる。「次は出荷できるのか、先が見えないのがつらい」と話す。
農水・厚労見解ずれ
お茶の基準設定を巡っては、厚労省と農林水産省の見解には隔たりがある。
生産過程を所管する農水省は「荒茶では基準を超えるケースが続出する可能性がある。過剰な対応をしてお茶を供給できない事態に追い込むことはできない」との立揚だ。
同省の試算では、消費者が口にする飲用茶の濃度は生茶葉から大幅に薄まる。
1キロの生茶葉からできる荒茶が200グラム。ブレンドした仕上げ茶にお湯を入れ煎じて飲む段階で6~9リットルのお茶になる。
生茶葉の段階で1キロ500ベクレルあっても飲用茶の段階で1キロ56~83ベクレルになる。
実際、静岡県では飲用茶では生茶葉より10分の1以上低い数値が出ており、「飲む段階での安全性は高い」と主張する。
茶葉の天ぷらや粉末を食べるケースもあるが、いずれも微量なので問題ないとみる。
一方の厚労省は、飲用茶の段階での規制には否定的だ。
1キロあたり200ベクレルという飲料水の基準を逆算して荒茶にあてはめると6千ベクレルになる。
同省幹部は「店頭に6千ベクレルの茶葉が並ぶことを国民が納得するのだろうか。何かが起こってからでは遅い」と話す。
同省によると、チェルノブイリ事故では乾燥した茶葉で検査をしたという。
13日に両省の副大臣が枝野幸男官房長官を交えて話し合った。
協議は続いており、菅政権としての指針が近く示される予定だ。
runより:放射能も問題だがネオニコチノイドの方が怖くて飲めない。