・19.ウラン-238(238U)
半減期 44.8億年
崩壊方式
アルファ崩壊して、トリウム-234(234Th、24.1日)となる。
その崩壊によてプロトアクチニウム-234m(234mPa、1.17分)を経てウラン-234(234U、24.5万年)が生じる。
ウラン-234は天然ウランに0.0055%含まれ、ふつうは放射平衡の達成によって天然物中のウラン-238とウラン-234の放射能強度は等しい。
ウラン-234は崩壊して、トリウム-230(230Th、8.0万年)となる。トリウム-230の崩壊でラジウム-226(226Ra、1,600年)などが生じ、崩壊が続いて最後は鉛-206(206Pb)となる。
鉱石から分離したウランにはトリウム-230、ラジウム-226とその崩壊生成物が含まれず、鉱石中のウランに比べて精製したウランの放射能強度は低い。
存在と生成
代表的な天然放射能で、天然ウランの99.2745%を占める。
太陽系がつくられた時から存在し、地球上では地殻に多く含まれ、マントルには少ない。
玄武岩、花こう岩および石灰岩1kgに含まれるウランの重量はそれぞれ0.43、4.7および4.4mgである(玄武岩1㎏中の放射能強度は5.2ベクレルに相当する)。
土壌1kg中のウランの重量は0.7~9㎎の範囲にある。
外洋海水中の濃度は3.3㎎/m3である。
ウラン資源
原子力発電を進めるには、ウランが必要である。
ウラン含有量が60%を超えるピッチブレンドのような鉱物は埋蔵量が少なく、資源とはいえない。
資源としては,ウラン含有量が0.2~1%の礫岩・砂岩などの堆積岩鉱床、マグマ起源の熱水鉱床などが重要である。
主な産地として、カナダ、南ア共和国、オーストラリア、アメリカなどがあるが、最近はカザフスタンが注目されている。
世界の可採確定埋蔵量は480万tといわれているが、その値は常に確定的なものではない。
採掘可能年代が100年程度としているが、信頼できるとは思えない。
海水中ウランの回収
海水の体積は13.7億㎞3、ウラン濃度が3.3t/km3であり、ウランの総量は45億tになる。この大きさに注目して海水中のウランの利用が話題になった時もあった。
海水中のウランは利用できるであろうか。重要なことは濃度が高くないことである。
電気出力100万kWの原発を1年間運転するには200tのウランが必要である。この量を得るには60㎞3の海水を処理せねばならない。
この水量は琵琶湖(水量27㎞3)の約2倍、東京湾(水量17㎞3)の約3倍となる。
この大量の海水が簡単に処理できるとは思えない。
この発想はあまりにも現実離れした考えである。