・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
・http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/tsuushin/pico_master.html
第1部 基調講演(概要) Ⅰ
化学物質過敏症の歴史・現状・将来
石川 哲先生(北里大学名誉教授)
--------------------------------------------------------------------------------
◆化学物質過敏症(以下CS)の海外各国での対応
CSが世に出てきたのは1990年頃からなので、それから20年経ち、色々な国々で知識は蓄積されてきている。
「CSが存在するのは納得する」ということが、最近になって先進国では認められるようになった。政策課題として何が必要か、先進国で求められているものは何か(患者側から、医師側から、経営者側から、国から)。
これが、これからやらなくてはならないことのキーワードではないか。
◆原因
カレンは、「急性中毒相当量に触れた後に発症する生体の過剰反応である。多種Multiple Chemical Sensitivity」と言ったが、AAEM(米環境医学会)の見解では、多種は必要ない。
また、彼の「一般の臨床検査で異常を示さない」という定義に対しては、全米で多くの学者が反対で、一般の臨床検査で異常を示すものが出てきている。
ただし、全部の患者さんに当てはまる検査は未だない。
我々の研究班(厚生労働省援助)は平成17年度に、低用量曝露高感受性症候群LESS: Low-dosage Exposure Sensitivity Syndromeという名前を提案した。
化学物質により、マイクログラム、ナノグラム量の曝露で見られ得る生体の過剰反応であると定義づけた(研究報告書はインターネット(注)で見ることができる)。
我々は1998年当時、接着剤のホルムアルデヒド、車の排気ガス、シロアリ駆除、木々の殺虫剤、除草剤etcが原因で、シックハウス症候群が起きるのではないかと考えた。その頃、日本でCS問題を考える人は、我々以外にはいなかったと思う。
◆シックハウス症候群(以下SHS)とCSの世界での見かたについて
両者を明確に線引きしてこれを分離し、定義、分類することは不可能でる。
これは2、3年前、外国の有名な先生Abou-Doniaらが論文に書いている。両者は重なり合い、互いに移行し合う症例がある。日本のみ、両者は異なるということを強調する珍しい意見を唱える者がいる。
定義に関しては1999年の合意(1999 Consensus):これはとても大事である。
1. 症状:再発と再燃
2. この状態はしばらく続く
3. 低用量曝露過敏反応
4. 原因除去で症状改善
5. 化学物質にあまり関係ない物質でも反応する
6. 多臓器由来の症状を示す
(一部短縮 文責 石川哲、2009)
症状がばらけるのが、この病気の特徴である。何かひとつ決め手になる症状があれば、診断は楽であるが、CSの場合はそういう事はない。
その原因となる物質が多種類だから。
このようなコンセンサスを中心にして診断することになる(例 カナダ)。
Iris Bellは、次のようなことを提唱した。
「化学物質によって一番最初に傷害されるのは神経系であって、神経系のつなぎ目シナプシスの伝達系に異常があって、過敏反応を起こす。
背景には生物学的要因、物理学的要因、社会心理的背景があるが、化学物質が基本である」。