・ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議より
http://www.kokumin-kaigi.org/kokumin03_53_07.html
ニュースレター 第56号 (2009年4月発行)
・シックハウス訴訟で勝訴
平成12年に新築分譲マンション(以下本件マンションという)を購入して入居した女性が、化学物質過敏症(以下CSという)に罹患し、就労や日常生活に著しい支障が生じ、多大な損害を被ったとして、マンション開発業者を相手どって損害賠償請求訴訟を提起しました。
そして、本年10月1日に、東京地方裁判所において、その訴訟の勝訴判決が出されました。
この判決は、新築マンションを購入して入居した後にCSに罹患したという典型的なシックハウスの事案において、建材から放散されているホルムアルデヒドとCSとの因果関係を認め、CSについて後遺障害等級11級相当と認定して逸失利益などの損害を算定した判断が明確に示された画期的な判決です[1]。また、原告の本人尋問を原告宅の屋外で実施するなど、裁判所が手続きを柔軟に運用して、真摯な審理を実施したという点でも画期的でした。
以下に、事案の概要と判決の骨子をご紹介します。
1、事案の概要
被害女性(以下原告という)が購入した本件マンションは、鉄筋コンクリート造陸屋根10階建ての全69戸からなる新築分譲マンションでした。
原告は、平成12年1月に本件マンションを購入し、7月から入居を始めました。しかし、入居の2日後から、室内の空気に異臭を感じるようになり、さらには頭痛、味覚異常、咽頭への刺激、じんま疹等の症状が発生しました。
平成14年になると症状はさらに悪化し、原因不明の下痢、頭痛、倦怠感などの不定愁訴が出るようになり、同年6月に北里研究所病院において化学物質過敏症と診断されました。
原告は、本件マンション購入時に、シックハウス症候群にならない物件を探している旨を被告に伝えていました(なお、東京地裁は、原告がこのような要望を被告に伝え、被告がそれを了承していたという原告の主張については、具体的かつ客観性のある質疑応答がされているとまでは認めがたいとしています)。
しかし、実際には、本件マンションにはF2等級[2] の建材が用いられていたために、厚生省指針値を大きく超える高濃度のホルムアルデヒドを放散していました。
そこで、原告は、平成16年8月31日に、マンション開発業者(以下被告という)に対して法人の不法行為に基づく損害賠償等を請求する訴訟を起こしま
した。
なお、原告は、症状の悪化により本件マンションに住み続けることが困難になってしまったため、化学物質の暴露を避けるため、平成14年12月以降、古い戸建て住宅に移転し、現在もなおそこに居住しています。