ナノ物質の安全管理 何が問題か?2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・■化審法改正とナノ安全管理
 日本では、昨年11月に厚労・経産・環境3省の合同検討委員会から『化審法見直し報告書』が発表され、それに基づき今国会で化審法が改定される見通しである。

同報告書では、ナノ物質については、“今後の科学的な知見の蓄積や国際的な動向を踏まえ、対応策について引き続き検討していくことが必要である”と述べているが、このことは、日本政府は当面、ナノ物質規制のための新たな措置をとるつもりはないことを意味している。
■日本政府はナノ物質を新規化学物質として認めない
 あるナノ物質が新規化学物質なのか既存化学物質なのかは、その物質の安全性評価が新たに求められるのかどうかに関わる重大事である。

できるかぎり安全性評価をしたくない産業界と、安全性を求めるNGOsとの意見の相違は世界中で共通である。

 日本政府は粒子径が小さいことをもって新たな物質と見なさないとしているので、通常サイズの物質がすでに登録されていれば、それと同一成分のナノ物質は化審法の下で安全性評価は求められない。

例えば、有害性が懸念される銀、二酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンなど多くのナノ物質は新たなテストを原則として要求されない。

 アメリカも同様に、有害物質規正法(TSCA)の下では粒子径が小さいという理由をもって新規物質とは見なさないが、一方、EUではREACHの下でナノ物質を新規物質として管理することが検討されている。
■日本の行政のナノ安全管理への取組
 昨年、「カーボン・ナノチューブがマウスに中皮腫」の研究が発表されると、厚労省は急遽、ナノ物質製造・取り扱い作業現場に向けて『当面のばく露防止のための予防的対応について』の文書を出した。

またナノ物質の安全性に関する検討会が厚労省、環境省、経産省により、個別にバタバタと立ち上げられ、ばく露の予防的対策、環境影響防止、製造事業者等の安全対策のあり方等に関する検報告書やガイドラインが出されたが、このような日本の行政の対応は欧米に比べると4~5年遅れている。
■ナノ安全管理
 日本では何が問題か? 日本のナノ安全管理の問題点を次のように挙げることができる。

 ▽総合的ナノ安全管理の展望が示されていない▽ナノ安全管理行政が縦割り▽ナノ推進に比べて、ナノ安全管理への比重が小さい▽安全規準や表示義務なしにナノ製品が市場に出ている▽国はナノの安全性の問題を市民に十分に伝えていない▽メディアはナノの安全性の問題をほとんど報道しない▽市民はナノの安全性情報を入手できない▽ナノ政策決定への市民参加がない。
■ナノ物質の安全管理が早急に求められる
 ナノ物質の有害性を懸念するに足る多くの研究報告がなされている状況において、予防原則に基づき、日本政府は早急にナノ物質の安全管理のための法を制定すべきである。

アスベストの愚行を繰り返してはならない。

 化学物質政策基本法制定ネットワーク(ケミネット)が提案する化学物質政策基本法案においても、第二十二条で“ナノ物質は新規化学物質とみなし、国はナノ物質による人の健康及び生態系への悪影響を未然に防止するために必要な規制の措置を講じなければならない”としている。

 日本政府は下記を含むナノ物質の暫定的な管理を早急に実施するとともに、総合的な「ナノ物質の安全管理の枠組み」を別途構築すべきである。

▽ナノ物質は全て新規化学物質と見なす。

▽製造・輸入者に、試験データを含む所定データの提出を義務付ける。

▽国は提出されたデータに基づき暫定的に安全性を評価し、管理グレード(許可、制限、禁止)を決定する。

▽新たなナノ物質は、管理グレードが決まるまでは市場に出すことはできない。

▽ナノ製品には表示を義務付ける。