・ PTSDとの違い [編集]
現在トラウマによる後遺症全般がPTSDという言葉で流通している[要出典]。
ところが、性的虐待の後遺症は愛着の持ち方、人格形成など広範な影響が認められ、精神障害の診断と統計の手引き(DSM-IV)に載っていたPTSDとは明らかに異なることが明らかとなり問題となった。
PTSDパラダイムとして問題化されたのは、以下の点である。
現在の場合、何年も経った場合PTSDではないとされるが、実際には何年も経ってからでも起こりうる。
外傷的事件とトラウマ反応との直線線的因果関係は、事故や災害など一度限りの事象を捕らえることには適しているのだが、現実の性的虐待においては複数の外傷的事件が重なって起こるため、きれいな因果律は描けないのである。
事件の影響でドミノ的に別の事件を呼んでしまったり、二次的被害が起こったり、フロイトの言うところの「事後性」(後付の解釈)により外傷的な作用が作り出されたり、些細な事により過去の事件がフラッシュバックで再演したりしてPTSDが発症したりするのである。
レイプなどの事件がさほど重視されない傾向があるが実際にはそんなことはない。
この原因は外傷的事件の事例を「生命や身体の保全に関わる危機」や「恐怖・無力感・戦慄」に限っているため、モラル意識や社会的タブーの意識の侵犯、喪失や屈辱などの暴力、被差別体験やマインドコントロールが、軽視され、罪悪感や裏切り、存在否定など主観的経験が二次的なものとしてしか扱われないところにある。
PTSDに属さなければトラウマでないと誤解されがちであるが、実際には欝、不安、パニック、解離、嗜癖、自傷行為、摂食障害などはよく起こるもので、現在のPTSD概念はそれらの症状に対し、複数の病名を付けることを医師に余儀なくさせている。
免疫力の低下が起こり、身体疾患に罹患しやすくなることもある。
また、トラウマが固定化し人格障害の形をとることもある。
また、アルコール依存や薬物依存もPTSDの過覚醒状態における自己投薬とも言われ、ヒステリーや身体化障害、疼痛や不定愁訴などの症状も認められる。
また、境界性人格障害の患者の多くがインセストの体験者であるというデータもあり、実際には内因性ではなく外傷性の事件によって引き起こされた境界性人格障害の患者が非常に多いとも推測されている。Stone(1981)によると75%が近親姦の体験者であるとされており、多くの境界性人格障害患者が性的虐待を受けているというのは間違いない。
ただし、愛着関係に障害があったために性的虐待のターゲットにされてしまった可能性を否定できないため、これに関してはさらなる研究が必要である。
トラウマの反応としては、概して境界性人格障害、自己愛性人格障害、反社会性人格障害、妄想性人格障害、解離性障害、転換性障害、身体表現性障害、摂食障害、アルコール依存、薬物依存、強迫性障害、非行、犯罪、性的逸脱、性同一性障害とされているもの原因にはそれらの外傷的事件が関与している場合がある。
もちろん内因性の場合もあるが、それは外傷性の事例を否定することにはならない。例えば白血病は内因性のものも放射線によるものも存在する。
すなわち原因が全く異なっていても全く同じ症状が現れることがあるので、それらはいずれの可能性も考える必要がある。