・wikipediaより
自閉症(じへいしょう、Autism)は、社会性や他者とのコミュニケーション能力に困難が生じる発達障害の一種。
先天性の脳機能障害であるが、脳機能上の異常から認知障害の発症へといたる具体的なメカニズムについては未解明の部分が多い。
時に、早期幼児自閉症、小児自閉症、あるいはカナー自閉症と呼ばれる。
日常語でうつ病やひきこもり、内気な性格を指して自閉症と呼ぶこともあるが、これは医学的には完全に誤った用語である。
詳しくは#病気概念を参照のこと。
定義 [編集]アメリカ精神医学によるDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental disorders)によると 第一軸の「通常、幼児期、小児期、または青年期に初めて診断される障害」における広汎性発達障害(pervasive developmental disorders)に位置づけられている。
自閉性障害の基本的特徴は3歳位までに症状があらわれ、以下の3つを主な特徴とする行動的症候群である。
1.対人相互反応の質的な障害
2.意思伝達の著しい異常またはその発達の障害
3.活動と興味の範囲の著しい限局性
原因 [編集]現在では先天性の脳機能障害によるとされており、多くの遺伝的因子が関与すると考えられている。
遺伝子の異常説。
水銀などの重金属の蓄積が原因だとの説[1]がある。
ただしこれらの説はMMRワクチンに含まれる水銀化合物が自閉症の原因であるとする論文[2]をベースにしているが、この論文にはデータに捏造があったことが発覚し[3]、掲載したLancet誌は2010年2月にこの論文を撤回した[4]。
一時期、七田眞や岩佐京子らによって「テレビの見せすぎが自閉症の原因」などの環境原因説が流行し、自閉症の子を持つ親は周囲から責められてつらい立場であったが、現在ではごく一部の学者以外は、自閉症は先天性の障害であり、育て方が原因ではないとしている(岩佐はのちに自説を一部撤回)。
日本ではベッテルハイムの著書「虚ろな砦」が広く読まれたため、未だに自閉症は虐待や過保護が原因である「母原病」であるとの認識が一部に根強い。
日本大学文理学部体育学科の教授である森昭雄が2004年 - 2005年前後にかけ、ゲーム脳についての講演の中で、自閉症を持つ子どもたちを「おかしい子ども」の一言で表現したうえ、「未熟な状態である赤ちゃんの頃から朝から晩までテレビを垂れ流して育てると、正常に育たず自閉症的な子供として育つ。」「最近自閉症の人数が増えているが、先天的なものは非常に少ない。テレビやビデオを見ている子どもは自閉症の状態になることがある。」と発言していたように、近年でも大学教授でさえ誤った認識を持っていた例がある。
フランス・パスツール研究所の研究チームが、フランス国立医学研究機構およびスウェーデン・ヨーテボリ大学と行った共同研究では、自閉症者の脳内で遺伝子「シャンク3(SHANK3)」に異常があることが指摘されている。
ただし、研究チームからはシャンク3で自閉症の全ての症状を説明できるわけではないと警告が発せられており、主要な社会的障害についてある程度説明ができるかもしれないと述べるにとどまっている。
父親が中高年のときに授かった子供である場合、新生児が自閉症になりやすいとする近年の米国の研究がある。
同研究によると、父親が40歳以上の新生児は、自閉症や関連の症例が30歳未満の父親の場合の約6倍で、30 - 39歳の父親と比較すると1.5倍以上であったとされている。
一方、母親については、年齢が高い場合でも多少の影響を及ぼす可能性は排除できないものの、子供の自閉症に与える有意な影響は認められなかった[5]。
これらの研究では、得られた知見が社会的に晩婚になる男性の遺伝子特性であるのか、遺伝的個人差を問わず加齢が精子に及ぼした影響であるのかは、明らかにされていない。
日本の独立行政法人理化学研究所は、神経細胞の生存や分化に重要な神経栄養因子の分泌を調節する遺伝子(CADPS2遺伝子)の異常が、自閉症の発症メカニズムに関係しているとの研究成果を発表している[6]。
ミラーニューロンの活動低下の影響説
ミラーニューロンとは、他者の動作を観察している際に、自分が動いている時と同じように反応する神経細胞(ニューロン)で、ジアコーモ・リゾラッティ(Giacomo Rizzolatti)らによって発見された。
サルの前頭葉運動前野に発見されたミラーニューロンはその後fMRIによってヒトでも同様に存在することが示唆された。カリフォルニア大学のV.S.ラマチャンドランとL.M.オバーマン(Lindsay M.Oberman)らのグループ、スコットランドのセントアンドリューズ大学のホイッテン(Andrew Whitten)らのグループは、ほぼ同じ時期に、対人スキルや共感の欠如、言語障害、模倣が上手く出来ない等の自閉症の特徴は、すべてミラーニューロンの機能不全と同じ特徴を持つとの説を発表した。
統計 [編集]統計的には国際的に増加傾向にある。ただし自閉症が実際に増加しているのではなく、疾患が世の中に認知されるにつれ、従来診断されなかった軽度のものも含まれるようになってきているからと考えられている。