・発症原因 [編集]関連遺伝子を多数持ち潜在的リスクのある人が、ストレスなどの外的要因にさらされた時に発生するとされ、統合失調症と同様に、ストレス脆弱モデルという概念で説明される。
しかし、メンデルの法則が厳密には当てはまらないこと、一卵性双生児であっても発症の有無は70%程度しか合致しないことから、完全な遺伝病とはみなされない。
遺伝要因があっても生活習慣で回避できる可能性があり、軽躁的なライフスタイルや薬物乱用、ストレスを避けることが重要である。
物理的には双極性障害は、脳細胞の細胞膜内外でのカルシウムイオンの調整能力が変調をきたす病気であるとの説があり、リチウムやバルプロ酸が、カルシウムサイクルのどこに作用することで病気を改善する効果があるのか、研究が進められている。
治療上の注意点など [編集]必ず精神科の医師にかかること。内科を含めて他科の医師のほとんどは双極性障害の治療の専門のトレーニングを受けておらず、かえって治療を難しくしてしまう可能性がある。
双極性障害は精神疾患で自殺率が最悪の20%前後とされている重病であり[7]、これはうつ病より顕著に高く、適切な治療は不可欠。
患者が精神科受診を拒む場合、本人の状況を最も把握している家族が半ば強引にでも同行するべきである。
このような場合、本人は自分が病気であるという認識(病識)が乏しいか全くないため、様々な治療上のトラブルが予想されうる。
本人が自発的に通院する場合、病院に家族が同行せずとも、家族から見て躁状態に見えるか鬱状態に見えるかの客観的コメントを医師に伝えるのは、医師にとって有用な情報提供となる。
躁状態に切り替わっても、治ったと勘違いし、気分安定剤の服用を停止してはならない。
躁状態の患者は、怒りっぽいことが多く、些細なことでケンカをしたり、問題行動について、頭ごなしに注意したりすると時に暴力に及ぶこともあり注意を要する。
手当たり次第に警察に被害届を出したり訴訟を起こしたりする例もある。
多弁の症状と相まってそうした逸脱行為を武勇伝として語るため公私ともに人間関係に支障を来すことが多く、社会的予後の悪さにつながる。
また、躁状態の場合、家族を含め周囲の者は受容的態度に徹しつつ、やんわりと注意し、お金やクレジットカード、実印などを取り上げるなどして早めに精神科を受診させ、薬物療法を開始することが必要である。
さらに、躁状態では死ぬことへの抵抗感がなくなるという点での自殺リスクがあることが、うつ病と大きく異なる。
鬱状態の場合、病気の症状の一つとして、あらゆることが悲観的に感じられ、過去の行動が後悔となって思い出される。
この悲観的な思考によって、さらに気分が落ち込むという悪循環に陥ることが多い。
そのため、鬱状態の時は努めて物事を深く考えない方がよい。適切な時間の睡眠をとる、脳と体を休ませることに集中し、新しいことには無理をして取り組もうとするのは避けるべきである。
また、鬱状態の場合、完全に良くなろうと思わず、鬱状態なりに生活できていれば、良くやっていると自分を評価することも有用。
一般的に双極性障害の患者は、本人の自覚的には少々の鬱状態である時に、客観的にはバランスのよい状態であるとされている。
医療機関の選択に当たっては、通院しやすさも考慮するとよい。
双極性障害の薬は長期間飲み続けなければならないことが多く、続かなければ意味がないからである。
また、院外薬局を用いており、患者にアレルギーがない場合、リチウムおよびバルプロ酸については継続利用の可能性が高いため、ジェネリック医薬品に変更することが推奨される。ただしその他の気分安定剤にはジェネリック医薬品が存在しないことがある。
職場の診療所に精神科医がいる場合はその医師にかかるのも手であるが、「薬は毒である」と考えがちな外科医をはじめ、薬理学の専門家という性質を持つ精神科医とは、発想法が合わぬ領域の医師も少なくない。
官公庁や大手企業の場合、人事管理上の観点から職場の診療所もしくは指定病院の医師(産業医)の所見や診断書しか組織内で通用しない場合があるので注意を要する。
医師と合わないなと思う場合は、担当医にその旨を率直に相談するのが大事である。
「合わない」と感じる理由が精神症状によっている場合もあり、また合わないと思うことを解決していくことで信頼関係をより高めていくことができる。
向精神薬を服用している場合、飲酒は作用を増強したりもうろう状態や錯乱を引き起こす可能性があるので、厳禁である。
うつ病の場合、患者に「がんばれ」と言うことは禁忌とされているが、双極性障害の場合は治療が進んで気分の波が小さくなってきた場合、本人が自制心をもって社会生活に復帰するという意識が不可欠であり、この段階にいたれば「がんばれ」は一概に禁忌と言えない。
むしろ本人の自制心がなければ社会的予後の観点からは治らない病気である。
芸術的才能との関連 [編集]多くの芸術家が双極性障害であったとされており、病跡学の観点からも、実際の患者プロフィールからも、芸術の才能や趣味との関連が指摘されることもあるのだが、確たる証拠があるとは言いがたい。
躁状態の弱いII型患者で反復性の鬱であったり、初期症状で軽度の鬱が持続していたりする際に、コンサートや美術鑑賞に行ったり語学教室に通ったりという行動が見られると、自己愛的な性格と勘違いされやすい一面も持つ。
ただし、古典的な双極性障害患者像は循環気質と呼び、他人にも受容的な八方美人の傾向があるとされ、自己愛が他責と結びついているわけでもない。
子供の双極性障害 [編集]専門誌「臨床精神医学」2006年10月号が双極性障害を特集した際に取り上げられたが、掲載論文では子供の双極性障害とされている症例について懐疑的な結論を下している。[8]