・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html
・ピコ通信/第93号
発行日 2006年5月24日
発行 化学物質問題市民研究会
e-mail syasuma@tc4.so-net.ne.jp
URL http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
--------------------------------------------------------------------------------
環境省・化学物質の内分泌かく乱作用に関するホームページに寄稿
環境ホルモン政策に異議あり
化学物質問題市民研究会 事務局長 安間節子
--------------------------------------------------------------------------------
環境省の"化学物質の内分泌かく乱作用に関するホームページ"への寄稿を環境省から依頼され、5月23日に送りました。
随意契約問題で現在ホームページの更新ができない状態だが、解決次第、原文のまま掲載されるという連絡がありました。URLは: http://endocrine.eic.or.jp/
--------------------------------------------------------------------------------
最近、環境ホルモンという言葉をほとんど耳にすることがなくなりました。
環境ホルモン問題はもう終わったという本も出版され、マスコミも関心を示さなくなりました。
本当にそうなのでしょうか。
1996年アメリカで出されたコルボーン博士らの『奪われし未来』は、人間や野生生物が微量の人工化学物質によってホルモンの働きをかく乱させられているという重大な問題提起をしました。
世界中がこの問題に関心を寄せ、日本でも国はSPEED'98というプロジェクトを立ち上げ、研究や対策を進めました。
ところが、昨年になって国は、「SPEED'98はやめる。わずか数種類の物質が水生生物に影響を与えることが確かめられたのみ」と結論づけました。そして、ExTEND2005というプロジェクトに変え、取り組みは大幅に後退しました。
その動きの象徴的な例が、2005年12月の国際シンポジウムで環境省が配布した環境ホルモンについての小冊子『チビコト』です。
■SPEED'98からExTEND2005へ
2005年3月に出されたExTEND2005では、これまでの研究成果についてのまとめがなされました。
環境ホルモン作用が疑われる65物質のリストのうち、26物質がテストされ、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ビスフェノールAについてメダカにのみ作用が認められたとし、リスト自体も廃止しました。
残りの物質については、テストされないままです。
試験の結果、統計的に有意差が証明できなかったということは、「影響がない」ということと同じではありません。
ラットの試験では、餌に植物エストロジェン物質やフタル酸エステル類などが含まれていた中での低用量試験であり、限界があったことを認めています。
「ヒトには影響がない」、「杞憂であった」などと産業界や一部の学者の言っていることは正しくありません。
例えば、スワンらは胎児期のフタル酸エステル類への曝露が男性生殖系に対する有害影響と関連すると発表しました(2005年)。
ボンサールとヒューズは2005年、過去7年間のビスフェノールAの低用量影響に関わる、日本、アメリカ、およびヨーロッパ等で実施された115の研究を調べた結果、「産業側の基金でなされた11の報告書は全て、低レベルでの有害影響はないとしているが、政府の基金による104の研究のうち94は影響があると報告している」と発表しています。
米環境健康科学研究所(NIEHS)のジャーナルEnvironmental Health Perspectives 2006年2月号は、ドイツのラットでの新たな研究を紹介し、ポリ臭化ジフェニルエーテル類(PBDEs)を含む難燃剤は、かつてダイオキシン類やPCB 類で報告されたような内分泌かく乱作用により性的発達に有害影響をもたらすことを強く裏付けている。
PBDE類はヒトの体内及び環境中のレベルが増大しており、その両方で残留性を示している。PBDE 類に対するもっと緊急な研究活動を実施することが安全であると考える-と述べています。