・診断・検査
プライマリ検査
ハンセン病と診断する場合に初めにする検査は、皮膚スメア検査と末梢知覚検査である。
皮膚スメア検査
皮膚を垂直に切開し、組織の塗抹をスライドガラスに置きチール・ニールセン染色(Ziehl-Neelsen stain)を行い、菌数を調べる検査である。
チール・ネールゼン染色は抗酸菌染色の一つの方法でらい菌を赤色に染める。
皮膚を切開するため痛覚が正常な部位では疼痛を伴うため、麻酔をしてから検査を行う。
菌数の表記には菌指数 (BI:bacterial index) が用いられる。
BIはMB型・PB型の分類や治療方針において重要である。
なお以前は、形態指数 (MI: morphological index) を測定して菌の総合的な力をみる方法もあったが、現在は行われていない。
末梢知覚検査
末梢知覚検査はハンセン病を診断する上で重要な検査である。
触覚や振動覚は保たれることも多いので、虫ピンなど太めの注射針を刺す痛覚検査、冷水・温水を入れた試験管を当てる温冷覚検査が合わせて行われる。
痛覚検査は意思の疎通が困難である乳幼児・高齢者で分かりにくいことがある。
温冷覚検査は閉眼し当てたことを被検者に分からないようにすると検出の精度がよくなる。
WHOの基準
診断確定のために、WHOでは知覚障害を伴う皮疹、知覚障害を伴う末梢神経の肥厚、スメア検査が陽性のうち、一つ以上がみえることとしている。
日本では知覚障害に伴う皮疹、末梢神経の肥厚・運動障害、病理組織検査、らい菌の検出の4点を重視している。
その他の検査
らい菌抗体の検出
らい菌特異的抗原の一つであるフェノール糖脂質 (PGL-1,phenolic glycolipid I) に対する抗体を血液検査で測定する方法が最近、行われるようになった。
L型で陽性であるが、T型ではまったく検出されない。
レプロミンテスト
らい結節から得られた抽出物、レプロミンを皮内に注射して反応を見る検査である。
この検査は、結核のツベルクリン反応に似ている。
らい菌に対する細胞性免疫反応をみる検査で、T型と正常人で陽性、L型で陰性となる。
現在では行なわれていない。
らい菌に対する薬剤耐性検査
らい菌の遺伝子解析から、抗がん剤#代謝拮抗剤|ジアフェニルスルホン (DDS)、リファンピシン (RFP)、ニューキノロン|キノロン剤への耐性は特定遺伝子の突然変異であることが判明し、遺伝子変異の検査により薬剤耐性が早く分かるようになった。
鑑別診断
ハンセン病の鑑別診断としては、病理組織学的に肉芽腫形成をする疾患であるサルコイドージス、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚エリテマトーデス(DLE)、環状肉芽腫、尋常性狼瘡(皮膚結核)、非結核性抗酸菌症 などに注意する。
また、神経障害として鑑別を要する疾患にはアロディニア(全身性無感覚症)がありハンセン病の症状に似ているので、この鑑別も重要である。
予防と治療
予防
ハンセン病に有効なワクチンは開発されておらず、現時点ではハンセン病の発症を予防することは困難とされている。
インドを中心にワクチン療法として結核の予防に使用されるBCGが使われ有効であるという報告も出されているが、報告によって有効率のばらつき(20 - 80%強)が大きく一般的な方法とされていない。
また、ハンセン病の危険に高率に曝露されやすい子供たちを中心にDDSを予防的に内服する試み(chemoprophylaxis)が、第9回らい国際会議(1968年)で有効であるとされ行われていたが、現在は行っていない。