・ また、日本の患者とアメリカの患者の症状の違いについてよく質問されますが、東北大学の工学部、医学部の先生方との研究によると、頭の症状から、認識、精神力への影響。筋肉、神経、皮膚、泌尿器、胃、心臓、気道などさまざまな器官への影響を数字で表わし、181名の平均値を出しました。
そして、ノーマルな方130名の平均値と比較しましたが、患者群は明らかに数値に差があり、米国の患者の傾向と同じような結果となりました。
ただし、米国のMiller教授によると、日本の患者はまだ軽いとのことです。
そして、ノーマル組の中に患者が含まれている可能性がある。
それを何とか除外しろとも言っています。そうすると、傾向も少し変わりますので、日本人へのアンケートの取り方も今後検討しなければなりません。
今までの古典的な中毒は、多量の化学物質によるものが多く、ある量で反応が出て、ある量で死亡してしまうというとらえかたでした。
化学物質過敏症の症状は裾野が広いですが、新築・改築時にある化学物質が基準値をオーバーした場合は、シックハウス症候群と見てよいでしょう。
その中でも重症な方に、ブーステストを行い、10分の1とか5分の1とか低い量で反応したら化学物質過敏症と診断します。
化学物質過敏性反応を示す患者さんとシックハウスの患者さんは過敏の程度で我々は分けて考えるようにしています。
ややこしいのは、毒物に対する反応を示したデータで、毒物の量が多い時、少ない時の2つの山のピークが見られることがあります。
例えば、実験で動物が行動学上で暴れるところの山と、最終的に動かなくなるところの山という2つの山があります。
この二層性の山を持つ物質が最近増えてきました。
化学物質の人体への影響については、今のところ小動物の実験によるものでしかはっきりとしたデータを示せません。
人間に化学物質を吸わせて反応を見ることは人体実験になってしまいます。
患者のインフォームドコンセントが得られて、納得してもらわないとできません。
ましてや毒物については、もし事故が起きたら大変です。
だから動物実験を行い、小動物によるデータで、議論をし、係数を掛けて演繹するのです。
そしてガイドラインや安全値をはじき出す。現状では、このような決め方しかありません。
しかし、小動物は、「頭の右が痛い」「手が重い」などの感覚の表現ができないので、幅広い症状は分かりません。今後はこうした研究も行う必要があると思います。
今、米国では、「クローニック・ロウ・ドウセッジ・エクスポージャー」(chronic low dosage exposuer)、要するに「慢性的に微量な量の露出による病気」という表現が使われています。
化学物質過敏症というとすべての化学物質が悪いように言われますし、「ケミカル・イントレランス」(chemical intolerance)などという言葉も使ったほうが良いのではという意見も出ました。
命名はいろいろとあるのですが、名前を議論しているより患者を治すことのほうが重要です。
視床下部と辺縁系、それに関連する大脳皮質、免疫、内分泌この3つが冒されやすい臓器である。
それで生体のホメオスタシス、体調を正常に保とうとするバランスが崩れ、シーソーがどちらかに傾いた状態なのです。