・C. 睡眠不足との関連
アルツハイマー病の原因として、脳内でのアミロイドベータ (Aβ) の蓄積が考えるれているが、アメリカワシントン大学などの研究チームの、2009年に行ったマウスを使った実験で、次の結果を明らかにした。
•睡眠中Aβが減少し、起床中に蓄積する。
•睡眠時間の短いマウスはAβの蓄積が進行し、不眠薬を与えると改善した。
症状
概略
症状は、徐々に進行する認知障害(記憶障害、見当識障害、学習障害、注意障害、空間認知機能や問題解決能力の障害など)であり、生活に支障が出てくる。
重症度が増し、高度になると摂食や着替え、意思疎通などもできなくなり最終的には寝たきりになる。
階段状に進行する(すなわち、ある時点を境にはっきりと症状が悪化する)脳血管性認知症と異なり、徐々に進行する点が特徴的。
症状経過の途中で、被害妄想や幻覚(とくに幻視)が出現する場合もある。
暴言・暴力・徘徊・不潔行為などの問題行動(いわゆる認知症#周辺症状|周辺症状)が見られることもあり、介護上大きな困難を伴うため、医療機関受診の最大の契機となる。
病期分類
アルツハイマー病の病気の進行は大きく3段階に分かれる。
根本的治療法のない病気なので下記のように慢性進行性の経過をとる。
•第1期
:記銘力低下で始まり、学習障害、失見当識、感情の動揺が認められるが、人格は保たれ、ニコニコしており愛想はよい。
•第2期
:記憶、記銘力のはっきりとした障害に加えて高次機能障害が目立つ時期で、病理学的な異常が前頭葉に顕著なことを反映して視空間失認や地誌的見当識障害が見られる。
この時期には、外出すると家に帰れなくなることが多い。
更に周囲に無頓着となったり徘徊や夜間せん妄もみとめられる。
特に初老期発症例では、感覚失語、構成失行、観念失行、観念運動失行、着衣失行などの高次機能障害も稀ではない。
•第3期
:前頭葉症状、小刻み歩行や前傾姿勢などの運動障害もみられ、最終的には失外套症候群に至る。
病理学的所見
狭義のアルツハイマー病では病理学的に脳組織の萎縮、大脳皮質の老人斑の出現がみられる。
老人斑はアミロイドベータ (Aβ) の沈着であることが明らかになっている。
死体の髄液から脳内のAβを定量するキットも実用化されている。
しかし、このAβが本症の直接原因なのか、それとも結果であるのかについて結論は得られていない。
ただ、FADの原因となるアミロイド前駆体蛋白遺伝子変異、プレセニリン遺伝子変異のいずれもAβの産生亢進を誘導することが判明している。
日本のアルツハイマー型老年痴呆は必ずしも、この病理学的条件を満たしていないものが多く、臨床症状だけで診断されたものも多い。
死後の病理解剖で脳動脈硬化病変が主体の認知症も多数含まれている。
日本では家族の、死後の「脳病理解剖」への同意率が極めて低い現状があり、アジア人の認知症の病理研究は、欧米人に比べ著しく遅れている。
普通の人よりもアルツハイマー病患者の方が脳脊髄液に入れたアミロイドβがオリゴマー状態になりやすいという研究結果が発表された。