・C. 現在の公衆衛生基準(安全限度値)の問題
電話通信に関する今日の公衆被曝限度値は、生体が被曝する際の唯一の心配は組織の加熱作用(RF について)と体への電流誘導(ELF について)だ、という仮定に基づいている。
これらの被曝は、非常に短期間の量でさえ有害な事がよく知られており、組織の加熱作用を引き起こす。
加熱作用を規制する点では、熱制限は目的を果たしている。
たとえば、レーダー施設やRF 熱融着機の周りで働く職業の人や、無線アンテナ基地局設置する人にとって、熱効果に基づいた限度値は熱からの(電力周波数ELF の場合、組織に電流を誘導する)ダメージを防ぐために不可欠だ。
これまで科学者と技術者は、私たちが現在、欠陥があると確信している仮定に基づいて、電磁波の被曝基準を作った。
それは、組織の加熱作用(RF) や体に誘導された電流(ELF)しか評価しないという危険性がなければ、どのぐらいの非電離放射線エネルギーを人間が許容(被曝)できるかを評価する正しい方法だった。
過去数十年間、加熱作用(または誘導電流)が全く発生しないはるかに弱いレベルのRF とELF 被曝で、生物影響や何らかの有害な健康影響が起きるという論理的な疑いを考えずに、限度値は設定されてきた。
いくつかの影響は、加熱作用が不可能な現在の公衆安全限度値の数十万分の一で発生することが示された。
それは、(熱よりも)生物学的変化を引き起こす電磁波によって伝達された情報のように見える――それらの生物学的変化のいくつかは、ウェルビーイング(訳注:健康で幸福な状態や満足すべき健康状態)の喪失、病気、そして死にさえもつながるかもしれない。
影響は、連邦政府機関が公衆の安全性を保つべきだ、と主張するレベルの数千分の一の弱い被曝や非熱被曝で発生する。無線技術で操作する数多くの新しい装置について、その装置はいかなる法令基準も免除されている。
科学的文献の論理的で独立した評価に基づく弱い電磁場への慢性被曝の有害性を管理するには、現在の基準は不適切だ、証明されてきた。
それは、新しい被曝基準のために、完全に新しい根拠(生物学的根拠)が必要だ、ということを意味する。
新しい基準は、ELF とRF(全ての非電離電磁放射線)について私たちが学んだ事を考慮し、生体の生物学的機能を適切にするために重要な、生物学的に実証された影響に基づく新しい限度値を立案する必要がある。
それは生命の維持に必要だ。新しい発生源の爆発的な増加は、地球上の居住地域から離れた地域以外、今や全世界を覆う、前例のない人工的な電磁場の高さを作り出してきたからだ。
世界的規模の公衆衛生問題が起こるのを防ぐために、ELFとRF に私たちを被曝させる新しい技術を、私たちが受け入れ、テストし、配置する方法で、中間点での修正が必要とされる。
専門家による最近の見解は、現在の被曝基準の不完全性を立証してきた。
熱制限は時代遅れで生物学に基づいた被曝基準が必要だ、という議論が広く普及している。
セクション4 は、WHOの2007 年のELF 健康基準論文、欧州委員会(EC)のために用意された2006 年のSCENIHR報告、2007 年のイギリスのSAGE報告、2005 年イギリスの健康防護局、2005 年のNATOの高等研究ワークショップ、1999 年のアメリカ合衆国無線周波数中間的政府機関ワーキンググループ、2002 年と2007 年のアメリカ食品医薬品局、2002 年の世界保健機関、国際がん研究機関(IARC、2001 年)、2000 年の携帯電話に関するイギリス国会独立専門家グループ報告(スチュワート報告)とその他で示された懸念を記した。
パイオニア的研究者、故Ross Adey 博士は、『バイオ・エレクトロマグネティック・メディシン』における最後の論文で次のように結論づけている。
「潜在的な健康リスクについて、答えの無い重大な疑問がある。それは断続的で、頻発する様々な人工的な電磁場に被爆することから生じ、人々の一生の重要な部分にわたって拡大するかもしれない」。
「疫学研究は、人間の健康にとってELF とRF 場は、リスク上昇にかかわる歴史的な証拠をもって、人間の健康にリスク要因の可能性があると評価した。
歴史的な証拠とは、たとえば、発展的な田舎で電化が進むこと、もっと最近では、ビルディングの電力線の配線と利用などだ。
これらの生物影響を示す適切なモデルは、全体の特徴として、非線形電気力学の非平衡熱力学に基づく。
平行熱力学に基づいた加熱モデルは、たいへん重要な意義のある印象的な未知の領域を説明することに失敗した。
……不完全な理解だが、磁場と相互作用する組織のフリーラジカルは、ゼロ磁場のレベルへ及ぶかもしれない」。(2)
私たちに影響を与えない被曝の下限は無いかもしれない。
生物影響と健康に有害な影響が発生しない下限があるか分かるまで、ELF とRF被曝、とくに不本意な被曝を増やす新しい技術を開発する「いつもどおりのビジネス」を続けることは、公衆衛生の全体像から言って愚かである。