・6. この病気ではどのような症状がおきますか
典型的な慢性膵炎の初期では、上腹部痛や腰背部痛などが主な症状で、その他、吐き気や嘔吐、腹部膨満感、腹部重圧感、全身倦怠感などがあります。
慢性膵炎が進行し、膵組織が破壊されると腹痛は一般に軽減~消失しますが、膵臓の働きが低下して、下痢、脂肪便、体重減少、口渇・多尿、糖尿病などの症状が出現します。
稀に痛みのない患者さんもいますが、約80%の患者さんが腹痛を訴えます。特徴的なのは、痛みが食事の直ぐ後ではなく、数時間後(時には12~24時間後)にあらわれることで、暴飲暴食、特に脂っこい料理やケーキなどの脂肪食やアルコール摂取が引き金になります。
いわゆる膵臓痛
1. 上腹部に限局する
2. 背部に放散しやすい
3. 持続性である
4. 鎮痛剤が効きにくい
5. アルコール、脂肪摂取によって増悪しやすい
6. 上を向いて寝ると痛みが強くなり、座ると軽減する
7. この病気にはどのような治療法がありますか
1) 強い腹痛発作の場合には急性膵炎と同じ治療を行います
一般的な急性膵炎の治療として、先ず膵臓を安静に保つため食事や水分の摂取は禁じ、血圧と循環状態を正常に保てるように大量の点滴輸液を行い、膵臓内での消化酵素(たんぱく分解酵素)の作用(自己消化など)を阻止するために、たんぱく分解酵素阻害薬を投与します。
さらに、感染症を予防するために抗菌薬も投与します。重症急性膵炎では、循環管理や呼吸管理などの集中治療が必要です。
動注治療
膵の壊死が広い範囲に及んだ場合には、静脈から投与した薬剤が膵臓の壊死部に到達しません。動注治療は、膵壊死部に高濃度の蛋白分解酵素阻害薬と抗菌薬が到達するように、壊死部位へ流入する動脈にカテーテルを留置して、蛋白分解酵素阻害薬と抗菌薬を持続的に投与する治療法です。
この治療は、重症急性膵炎の患者さんが適応となり、軽症や中等症急性膵炎の患者さんは対象外になります。
急性膵炎の早い時期では膵臓に炎症が起きていますが、3~5日以降になりますと、膵臓以外の臓器(肝臓、肺、腎臓など)に炎症が広がっていきます。
このような状態になってから動注治療を開始してもあまり効果はありませんので、急性膵炎が発症してから3日以内(48時間以内が最も望ましい)の患者さんが対象となります。
しかし、急性膵炎に対する動注療法は現在のところ保険適応ではありません。
持続的血液濾過透析
慢性腎不全の患者さんに行われている血液透析と類似の治療方法です。血液浄化療法は、血液中の有害物質を除去したり、過剰な水分を濾過して腎臓の働きを補助します。
その他の治療
膵臓の壊死部に細菌感染がおこり化膿した場合には、体外から化膿部位へチューブを入れて、膿を体外へ誘導したり(ドレナージ術)、手術をして膵臓の壊死感染部分を除去することもあります。
胆石が膵臓の出口を塞いで膵炎が悪化したり、黄疸が進行する場合には内視鏡で、胆石が排出されやすくなるような手術を行います。